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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章
12月30日。
午前中にスケートのレッスンを終えたヴィヴィは、もう幸せの絶頂といった表情で、車の助手席のシートに収まっていた。
隣を振り返ればそこにいるのは勿論――、
「お兄ちゃん♡」
ヴィヴィが甘えた声でその名を呼べば、運転中の匠海は、
「はいはい、何ですか?」
と面倒臭そうにつれない返事を返してくる。
その兄の様子に、一瞬むくれそうになったヴィヴィだったが、すぐに機嫌を直してワンピースの膝の上に乗せたバッグに視線を落とした。
(えへへへ……)
心の中で気持ち悪い笑い声をあげたヴィヴィは、にんまりとしながら、こうなるに至った経緯を思い出していた。
2日前の12月28日。
「今日僕、用事あるから、ここまで勉強頑張ってね……?」
午前中のスケートのレッスンを終えたクリスは、スケジュール表を見せてそうヴィヴィに指示すると、自分はどこかに出掛けてしまった。
ヴィヴィは言われたとおりに勉強を熟し、当たり前だが分からないところも自分で調べ、頑張った。
ディナーの時間になって朝比奈に呼ばれ、ダイニングのある1階に降りたヴィヴィの目の前――、玄関から入ってきたのはコートに身を包んだ、匠海とクリスだった。
「あれ……? おかえりなさい……?」
「ああ、ただいま」
「ただいま、ヴィヴィ……」
条件反射でそう二人に挨拶したヴィヴィだったが、二人の返事を聞きながら、首を捻る。
「二人でお出かけ?」
そのヴィヴィの問いに、クリスが頷く。
「うん。兄さんの車、12ヶ月点検で、ディーラーに持って行ったんだ……」
そう答えるクリスに背を押され、ヴィヴィはダイニングに入らされる。
脱いだコートを執事に預けて入ってきた二人は、それぞれ自分の席に着く。
「いいなぁ……。ヴィヴィも行きたかった……」
途端にそう拗ねた声を上げたヴィヴィは、朝比奈に椅子を引かれて自分も座る。
「冗談……。ヴィヴィが来たら、五月蠅くて敵わない」
げんなりした表情でそう言ってくる匠海に、ヴィヴィはぷうと頬を膨らます。
「まあまあ……。兄さんの車、2シーターだし。それに、ヴィヴィは来ても、楽しくなかったと思うよ……?」