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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章         

「兄さん……? 昔は兄さんのほうが、甘やかしてたでしょう……?」

 クリスが怪訝そうに匠海を振り返るが、兄はまたシャンパンを飲み干して、苦虫を噛み潰したような表情をした。

「……覚えてない」

「……本当に、仲直り、したんだよ、ね……?」

 クリスのその問いに、匠海が軽く両肩を上げて視線を逸らす。

「兄さん、ヴィヴィの事も、ドライブにでも、連れて行ってあげたら……? まだ渡英まで、日があるんだし……?」

 クリスのその提案に、匠海はちらりとヴィヴィに視線を寄越した。

「いや俺、十分ヴィヴィの相手、してるぞ?」

「……――っ」

 その匠海の返しに、ヴィヴィは絶句した。

(お兄ちゃんっ!? 何言って……っ)

「なあ、ヴィヴィ?」

「う、ん……」

 匠海とヴィヴィのやり取りに、クリスが不思議そうに少しだけ首を傾げた。

「ふうん? まあ、兄妹仲良くね……?」

 ――そしてその日の夜、何故か執拗に何度も抱かれて、息絶え絶えのヴィヴィに、匠海が、

「俺と出掛けたいの?」

と尋ねてきてくれて、

「も、もちろん、出掛けたいけれど……」

 そう正直に答えたヴィヴィに、匠海は2日後の午後のお出掛けを約束してくれたのだった。







 そして今日、約束通りドライブに連れ出してくれた匠海の横で、ヴィヴィは浮足立っていた。

 今日着るワンピースを選んでいる最中、クローゼットの中をぐちゃぐちゃに荒らしてしまい、朝比奈に「将来的にはお片付けも出来るようになりませんとね?」とお小言を貰ったくらい、楽しみにしていたのだ。

「どこに連れて行ってくれるの?」

「秘密」

「ふうん。でもヴィヴィ、大好きなお兄ちゃんとなら、どこに行っても嬉しいの!」

 そう正直に言って運転席の匠海の横顔に微笑むと、サングラスをした匠海の口元だけが笑みを形作った。

 数十分後、都内を走っていた車は、日本橋のある一軒のラグジュアリーホテルの車寄せへと滑り込んだ。

(ホテル……?)

 ヴィヴィはドアマンに開かれたドアから外に出ると、車を預けた匠海と共に、開放的なロビーへと入っていく。

 一面ガラス張りで吹き抜けのそこで、「凄いな~」ときょろきょろしていると、匠海に手を引かれてフロントに導かれた。

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