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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章
「予約している篠宮です」
サングラスを外してそう言った匠海に、フロントスタッフは微笑みながらパソコンを弄る。
「はい。13時からのスパスイートのご予約を頂いております、篠宮様ですね? チェックインはスパのコンシェルジュでお伺いします」
スタッフはそう言うと、近くのベルボーイに手を挙げ、彼にスパまで案内して貰うこととなった。
「お兄ちゃん、スパって……?」
不思議に思って兄を見上げたヴィヴィに、匠海は苦笑する。
「そのままの意味。スパ、エステ……マッサージとか?」
「え~!? ヴィヴィ、初めてっ」
ベルボーイに促されてエレベーターに乗り込んだヴィヴィは、そう無邪気な声を上げた。
「でもいつも、整体は行ってるだろう?」
「うん。でもだいぶ違うと思うの」
ヴィヴィがそう言いながら首を傾げる。
「確かにな」
エレベーターがスパ専用フロアへと到着し、匠海はそこでチェックインを済ませた。
「いらっしゃいませ、篠宮様。本日はMO―TOKYOスパをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。篠宮様は最上階のシグネチャースイートのご予約を受け賜わっておりますので、そちらでトリートメントニューをお伺い致します。どうぞこちらへ」
白い洗練されたユニフォームに身を包んだ美女が、そう挨拶して先ほどとは別のエレベーターで、兄妹をシグネチャースイートへと案内した。
「わあっ すご~いっ!!」
部屋に通された途端、ヴィヴィは目を見張った。
50平米の広々としたそのスイートは、バスを備えたトリートメントルーム、シャワールーム、ダブルベッドと見紛う如きフラットなソファーが据え置かれたエリアまである。
そして驚くべきことに、ほぼ全面がガラス張りで、眼下には東京湾岸のパノラマが眺望でき、そしてその視線の先には東京スカイツリーがそびえ立っていた。
べったりとガラスに張り付いて驚いているヴィヴィを、美女がくすりと笑って見つめてくる。
「可愛らしいお嬢様ですね、妹様でいらっしゃいますか?」
「ええ。幾つになってもこんなでね、ご迷惑おかけします」
匠海のその答えに、ヴィヴィは「こんな?」と小さく首を傾げる。