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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章         

「いいえ。フィギュアの篠宮選手ですね? 初めてのスパ、楽しんで頂けると嬉しいですわ」

 そう言ってとても優しい微笑みで見つめてくる美女に、ヴィヴィは頬を赤らめた。

「あ、はい……よろしくお願いします」

「どうぞこちらへ。ウエルカムドリンクをご用意いたしました」

 その後、不思議な味のするドリンクを頂きながら、どのトリートメントを受けるか説明を聞いていたヴィヴィは、隣に座っている美女に興味津々だった。

(ほんと、綺麗な人だな~。凄くいい匂いするし、お肌もツヤツヤ。スパってそんなに綺麗になれるのかな……?)

 自分の事を穴が開くほどじ~と見てくるヴィヴィに、美女は微笑んで小瓶を差し出してきた。

「お嬢様、宜しければ、トリートメントで使用するオイルを選んで頂けますか?」

「え? あ、はい……すみません、見蕩れてました……」

 正直にそう告白したヴィヴィに、美女は、

「はい?」

と微笑んだまま返してきた。さすがプロ――。

「いえ、何でもないです。……お兄ちゃんは、どのオイルにするの?」

 ヴィヴィは目の前に並べられた小瓶の数に圧倒され、隣に座った匠海に尋ねる。

「ん~……。俺は、サンダルウッドかな」

「サンダルウッド? ……あ、いい香り~」

 ヴィヴィも自分の目の前の小瓶から探し出し、香りを確かめる。

「サンダルウッドは、緊張を鎮めたいときに最も役立つ精油の1つですね。インドの寺院で瞑想の際の薫香として使われています」

 美女のその説明に、ヴィヴィはうんうん頷く。

「あ、分かります……なんか、お寺とか森林っぽい」

「俺のはいいから、ヴィヴィも好きなの選びなさい」

 兄と同じ香りでいいやと思っていたヴィヴィに、匠海がそう促してくる。

「え……でもヴィヴィ、優柔不断だから、時間掛かるよ?」

「いいから。待ってる」

「う、うん……頑張る」

 そんな兄妹のやり取りに、美女がくすりと声を上げて笑った。

「うん! ここまでは絞れた」

 5分後、ヴィヴィは目の前に3本の精油の小瓶を並べていた。

「マンダリン、マージョラム・スイート、マグノリア……」

 その3つをガラスのテーブルに乗せたまま、ヴィヴィは腕組みしてう~んと唸る。

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