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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章         

 初めはそんな感じで、そわそわびくびくしていたヴィヴィだったが、最初のフットマッサージが終わる頃には落ち着いていた。

(まずい……物凄く、気持ちいい……)

 ヴィヴィはソルトスクラブを全身に擦り込まれながら、あまりの気持ちよさに口元が緩んで良からぬものが垂れそうになり、いかんいかんと唇を引き締める。

「オリエンタルバスをご用意いたしました。どうぞそのままお浸かり下さい」

 エステティシャンの指示通り、バスタオルを胸の下から巻いたヴィヴィは、窓際にある大きなバスタブに張られた湯に浸かった。もちろん裸で。

「わ~、いい香りっ これ、なんてお花ですか?」

 ヴィヴィが水面に浮かんでいるピンク色の花を摘まんで、そばに控えてくれているエステティシャンに尋ねる。

 その無邪気な様子に、笑みを深めた彼女が「デンファレですよ、お嬢様」と教えてくれる。

 ヴィヴィはう~んと湯の中で伸びをする。

(ふわわ……最近、試合もあって忙しかったからな~。癒される~)

 そしてまだ施術を受けている匠海を、ちらりと振り返る。

 仰向けになった匠海は瞼を閉じているので、寝ているのか起きているのか分からない。

(お兄ちゃん、ヴィヴィの為に連れて来てくれたのかな? 疲れてるんじゃないかって……。嬉しい)

 十分寛いだヴィヴィは、バスタブから出て躰の水分を拭き取り、ベッドへと戻った。

 その後オイルを使ったボディーセラピー、季節のリフレッシュメントの施術を受けたヴィヴィは、終わるころにはもうとうに夢の世界の住人になっていた。

「お嬢様、これで全てのトリートメントは終了となります。……お嬢様――?」

 そうヴィヴィに声を掛けてくれた、エステティシャンの声にも覚醒しない妹に、

「ああ、いいです。このまま、寝かせておいてください。疲れてるみたいで……」

と匠海が伝えて苦笑してみせる。

「畏まりました。こちらにスペシャルドリンクをご用意しておきますので、お目覚めになられましたらどうぞ」

「ありがとう」

 全てのエステティシャンが退室し、静かになったトリートメントルームには、ヴィヴィのすやすやという寝息だけが下りていた。

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