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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章         

 身を固くしたまま戸惑っているヴィヴィの、その華奢な背中を抱き寄せた匠海は、その耳元で囁いた。

「分かったって……。もう、お前……『俺のもの』とか言っておきながら、注文多いんだよ」

「………………」

「潮吹かすなとか、お尻の穴触るなとか、後ろから入れるなとか……。明るいところでやるなとか……」

 そう不服そうに言ってくる匠海に、ヴィヴィは「ごめんなさい……」と謝ることしかできない。

「まあ、これだけ我が儘に育てたのは、俺の責任でもあるし……。しょうがない……か。さっきのは、もう、やらない」

「ほ、本当……?」

 譲歩してくれた匠海に、まだ安心出来ないヴィヴィが、恐る恐る確認してくる。

「ああ。約束する……。けど、生理的に無理って……大げさな……」

 そう呆れたように呟いて、匠海はヴィヴィの肩に顎を乗せてきた。

 ヴィヴィの脳裏に先程の屈辱的でしかない行為が思い起こされ、ぶるりとその華奢な躰が震える。

「……でも、本当、なの……。ありがとう……、ありがとう、お兄ちゃん……」

 そうお礼の言葉を口にしたヴィヴィは、自分を抱きしめてくれるその逞しい両腕に、自分の腕をからませた。

 その後二人はぼうとハーバルバスに身を委ね、眼下に広がる景色を見るともなしに眺めていた。

 最初は躰を強張らせていたヴィヴィだったが、温めの湯から立ち上るリラックスする香りや、匠海が時折くれる耳や頬への優しい口付けに、徐々に強張りも解けていった。

「スパ……、気持ちよかったか?」

 耳朶に押し付けられた唇から発せられたその問いに、ヴィヴィはうっとりと頷く。

「うん……、気持ち良すぎて、最後寝ちゃった……。連れてきてくれて、ありがとう。お兄ちゃん」

「また来ようか?」

 匠海のその声はリラックスしたもので、ヴィヴィはその胸に甘えるように更に背を預ける。

「うん……。ヴィヴィ、今度は、お兄ちゃんが使ったのと、同じオイルにするね?」

「サンダルウッド?」

「うん……ヴィヴィ、好き……」

 ヴィヴィはそう言うと、匠海の片手を両手で包み、その手の甲に口付けた。

 ふわりと薫るその香りは、エキゾチックでセクシーなのに、まるで森の中に迷い込んだような安心感も与えてくれる。

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