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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章
「サンダルウッドは、男性の汗に含まれる成分と似た物質が含まれていて、催淫特性がある」
「ふうん……じゃあ、お兄ちゃんが付けた香りを、楽しむほうがいいんだね……」
ヴィヴィはそう呟くと、匠海の掌にそっとその頬を寄せると、ゆっくりと瞼を閉じた。
「ちなみにヴィクトリアが迷っていた、マージョラム・スイートは、制淫特性があるから却下した」
「…………そう」
(初めから、そのつもり、だったんだ……)
長い睫毛を湛えた瞼がゆっくりと開かれ、そこから潤んだ灰色の瞳が現れる。
「……お兄ちゃん……」
「うん?」
「……キス、しても、いい……?」
その掠れた問いかけに、匠海がヴィヴィに巻きつけていた腕を解く。
「おいで……」
匠海のその誘いに、ヴィヴィは静かな水音を立てて立ち上がると、兄のほうを向いてその股の間に膝立ちになる。
上から見下ろしてくるヴィヴィを、匠海が灰色の瞳でじっと見上げてくる。
(ああ……なんて、綺麗な人なんだろう……、
物心付いた頃から、ずっと見つめ続けているのに、
どれだけ月日が経っても、見飽きることがない……)
ヴィヴィの両掌が、ゆっくりと匠海の逞しい胸に這わされる。
小さな頃から、いつも自分を抱きしめてくれた逞しい胸。
肩車も、おんぶも、嫌がることなくしてくれた広い肩。
縋り付く度に、匠海の香りが立ち上る、男らしい首。
小さな頃は甘やかし、時に諭してくれ、大きくなってからは自分を翻弄し続ける、その大き目の唇。
すっと伸びた鼻梁も、彫りの深い切れ長の瞳も、いつも美しく輝いている豊かな黒髪も。
「……好き……、大好き……」
(ヴィヴィはずっと、お兄ちゃんに夢中なの……)
何故かぶるりと躰が震えた。
いつの間にか匠海の髪を梳いていた自分の両掌を匠海の頬へと添えると、ヴィヴィはゆっくりと屈み、自分の唇を匠海の唇に合わせた。
何度もその感触を味わうように啄ばむヴィヴィに、匠海が両手を伸ばして妹の躰を抱き寄せてきた。
それを合図にヴィヴィが匠海の唇の間から小さな舌を差し込み、唇の縁から舐め始める。
(ああ……なんで好きな人の躰は、甘く感じるんだろう……)
ヴィヴィは頭の隅でそんな事を思いながら、徐々に口付けを深くしていく。