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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章
「ヴィクトリア、おいで。のど乾いただろう?」
そう言って、扉の辺りで立ち尽くした妹に、すっと掌を差し出した匠海に、ヴィヴィは吸い寄せられるように近づいていく。
細長いクッションに腰を預けている匠海の傍に座らされると、その手に細長いグラスが握らされる。
透明で赤いその液体をぼうと見つめたままのヴィヴィに、匠海は嘆息するとそれを取り上げ、口に含み、強引に妹に口移しで飲ませた。
されるがまま何度かその液体を嚥下したヴィヴィは、こつりとグラスが置かれる音を聞きながら、匠海に壁に押し付けられた。
(お兄ちゃんが、欲情してる……)
ヴィヴィが一目でそう分かるほど、匠海のその双眸は熱く濡れていた。
その瞳が細められたと思った瞬間、ヴィヴィの唇は奪われていた。
すぐに口内に侵入してきた兄の舌は、先ほど散々昂ぶらされたヴィヴィの躰を、あっという間に再燃させる。
バスタオルの上から胸を揉み込まれるのが、もどかしい。
そして自分の恥ずかしいところからは、とろりと蜜が零れ始めていた。
切なそうに膝を擦り合わせたヴィヴィに気付いた匠海が、ゆっくりと唇を離す。
「ふっ……、早く抱けって?」
「…………うん」
意地悪くそう尋ねてくる匠海に、ヴィヴィは小さく頷く。
「ああ、エロくて本当に可愛いよ、ヴィクトリア」
そう甘く囁いた匠海の顔には、ヴィヴィを心底慈しむ表情が浮かべられていて。
「………………っ」
そして匠海のもくろみ通り、ヴィヴィはその兄の表情に簡単に心奪われていた。
飴と鞭――。
甘やかしてばかりいると自分はすぐに自惚れるから、酷くして、ただの所有物だと分からせようとしている。
そして長年の経験から、妹には痛みや屈辱といったものに堪え性がないと熟知している兄は、気まぐれに飴を与え、その心を翻弄して繋ぎ止めることも容易にやってのけるのだ。
「………………」
(分かってる……。ちゃんと、解ってるから……。
お兄ちゃんがヴィヴィを、愛していないということくらい……)
灰色の大きな瞳が、数時間前まであった、その輝きを無くしていく。
ヴィヴィの心を支配しているのは、明らかな絶望だった。