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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第67章         

(でも……どんなことをされても、もうヴィヴィは、

 お兄ちゃんから、離れたくな、い……の……)

 そう心の中で呟いたところで、ヴィヴィの意識は完全に途切れた。

 急にぐったりと力を無くしたヴィヴィの上半身が、匠海に引っ張られる力だけで、辛うじてソファーに突っ伏すのはま逃れた。

「ヴィクトリア……? ああ、気を失ったか……」

 匠海はそう何でもない事のように呟くと、両手を離してヴィヴィの頭をソファーに下した。

 そして腰だけは高々と抱え上げ、まだ衰えを見せぬ己の陰茎を深々とそこに突き立てる。

 意識のない妹を容赦なくがんがんと突き上げる匠海は、唸るようにぶつぶつと呟き続けた。

「ああ、ヴィクトリア……っ もっと、もっとよこせっ、俺に、もっと……っ」







 気が付いた時、そこは闇に包まれていた。

 ヴィヴィは重い瞼を何度がぱちぱちと瞬き、眉を眇める。

(ここ……は……)

 躰を起こすのが何故か物凄く億劫で、目だけで辺りを見回すと、闇に慣れ始めた瞳が、目の前の匠海の姿を捉える。

 躰を横たえている自分から少し離れたところ、躰は真上を向いているのに、ヴィヴィからはその後頭部しか見えない。

「………………」

 ふっ。

 ヴィヴィの薄い唇から嗤いが漏れる。

 笑わずにはいられなかった。

 こんなにも自分は落ちぶれて、兄にとっては取るに足らないものになってしまったのかと、自覚せずにはいられなかった。

(もう、お兄ちゃんは、ヴィヴィを抱きしめて眠ることすら、してくれない……)

 いつも兄と躰を重ねて目を覚ますと、自分の部屋へ戻される時以外は、必ず兄の胸の中だった。

「………………」

 ヴィヴィはゆっくりと手を付いて躰を起こす。

 室温は適度に保たれていたのでまったく寒くはないが、自分が全裸のままだと気づき、近くに放置されていたバスタオルをその躰に巻きつけた。

 大きなソファーから立ち上がろうとすると、脚の間から粘度の高いものがどぷりと溢れ出てきたのに気づき、咄嗟に大理石の床へと降りた。

 美しいその石の床に、ぱたたと白濁が滴り落ちる。

「……――っ」

 ヴィヴィの灰色の瞳に涙が盛り上がり、裸足の足がぺたぺたと小さな足音を立て、その場から逃げるように離れていった。

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