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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第68章
(い……やぁっ くるし、い、よ……。お兄、ちゃん……っ)
しかし頭の中をその思いが締めていたのはその一瞬だけで、それよりも気になっていた事柄に、ヴィヴィの意識は引き戻される。
両掌を付いたシーツが、その細い指先にむしられる様に掻き集められ、波打つ。
(……う、そ……、嘘――っ!!
ど、どうしようっ もしも……、もしも、入ってたらっ
ドーピング検査に、引っかかるもの……、入っていたら……っ!?)
その疑問に、ヴィヴィの躰からざっと音を立てて血の気が引いていく。
フィギュアスケートのドーピング検査は、任意に抽出された選手が行う。
ヴィヴィはジュニア時代からずっと金メダルが続いていたので、ほぼ毎回、ドーピング検査の対象とされてきた。
「……う……そ……」
血の気が引いて真っ白になったヴィヴィの唇から、微かな声が漏れる。
(つ……、次の試合は、ええと、ええとっ ……四大陸選手権――っ!?
ま、まだ1カ月も先だし、大丈夫だよ、ね……?
で、でも、薬剤の効果が長かったり、薬の半減期とか、
物によって違うって、柿田トレーナーが……っ)
動揺から恐慌をきたしたヴィヴィが、そう一人で混乱している最中、
「ふうん……。使うの初めてだけど、まあまあだな」
「……――っ」
匠海が発したその言葉に、ヴィヴィは瞳を見開いて絶句した。
上体を支えていた細い両腕ががくりと折れ、ヴィヴィの頭はベッドの上に突っ伏した。
腰まで覆っていたナイトウェアが胸下まで捲り上がり、白い背中が露出する。
やがてその華奢な躰は、引き付けを起こしたように諤々と震え始めた。
(……そ、んな……、お兄ちゃんも、使った事無いもの……、
その成分なんて、知る筈……ない……)
「おっと、いきなり崩れるなよ、危ないな」
匠海はそう叱責すると、その白い背中の感触を掌で確かめながら、震えるヴィヴィの躰を突き上げ始めた。
ぎゅぷ……、ぐちゅう……。
寝室に粘着質な音が漏れる。
貫かれるたび、ヴィヴィの躰が強張り、がくがくとした震えは、一向になりを潜めない。
その血の気のない唇から洩れるのは、突き上げられるたびに零れる吐き出す息だけ。