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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第68章
躰ではうっとりと匠海の全てを感じながらも、心では絶対に与えられないものを欲して、揺れ動いて。
それを見透かしたように、ヴィヴィの唇から自分のそれを離した匠海が、妹の瞳を覗き込みながら囁いてきた。
「やばいな、お前に惚れてしまいそうだよ……。
俺だけの前でこんなに可愛くて、エッチで、けな気で……。
もっと、お前の事を好きなりそうで、本当に恐ろしい――」
匠海が甘く甘く囁いたその言葉に、ヴィヴィの瞳が凍りつく。
(……どう、して……どうして、そんなこと……)
「……や、め……て……」
逸らしたいのに、匠海の瞳から、目が逸らせない。
兄の視線が強すぎて、瞬きさえも許されなくて、ヴィヴィの瞳がじんと熱く痺れる。
(躰だって、心だって、ヴィヴィの全てをお兄ちゃんにあげるつもりだったのに、
お兄ちゃんは心のない『人形』のヴィヴィがいいんでしょう……?
なのに、なんで、今更――)
「じゃあ、そんな一人だけ傷ついた顔してないで、もっと俺の事を満足させろよ」
匠海の整った顔が険しく歪み、至近距離からヴィヴィを見下ろしてくる。
心の奥底まで見透かしてくるようなその灰色の瞳に、ヴィヴィの丸裸の心は捕らえられ、踏み付けられ、その足元に平伏された。
ヴィヴィの双眸が苦しそうに歪められる。
(もう……、『自分』をお兄ちゃんの前で、絶対に出しちゃ駄目。
そうでないと、ヴィヴィは本当に、スケートさえも、失ってしまう――)
ぞっとした。
兄のことをここまで恐ろしいと思った事など、この16年間、一度も無かった。
この男の執着心は、人並み外れている。
いつも優しい仮面を被って、いい兄、いい息子を演じ、その下では、手に入れたものの躰だけでなく、心も、そして自我さえも、全て手中に収め支配しないと気が済まない。
でも、そんな兄を欲したのは自分。
先に貪ったのも自分。
兄の本質など、何も知らず、ただその上辺だけに惚れて――。
「………………っ」
ヴィヴィの薄い唇がきゅっと噛みしめられる。