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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章
12月31日、大晦日。
師も忙(せわ)しく走り回る師走――双子も日の出前から、慌ただしく過ごしていた。
5時起きで昼過ぎまでスケートのレッスンを受けると、手早く昼食を取り勉強。
夕方からは松濤の屋敷の裏手にある、渋谷区神南のNHKホールでの、紅白歌合戦の審査員としての役目を果たすため、リハーサル・5時間の本番と予定がびっしり詰まっていた。
「それではゲスト審査員の皆様、直前リハーサルが始まりますので、会場にお入り頂けますか?」
大きな楽屋で他の審査員達と待っていた双子は、呼びに来たADに「「はい」」と返事をし、座っていたパイプ椅子から腰を上げた。
「なんか、凄くピリピリしてる……?」
本番用の真紅のドレスを身に纏ったヴィヴィは、隣の審査員席に座っている、紺色のスーツ姿のクリスに小声で囁く。
「だね……、どうしたんだろう……?」
目の前の巨大なセットに集まる合計50組の歌手・アーティスト達、スタッフ達が醸し出すどこか異様な雰囲気に、双子は戸惑う。
「あ~、あれよ。あの子達が生放送で、何かやらかすんじゃないかって、NHK上層部が、睨みを利かせてるってわけ」
クリスの隣の教育評論家の尾木先生が、おネエ言葉でそう教えてくれる。
「へ~、見てるほうはワクワクしますが、やってるほうは胃が痛くなりそうですね」
そうヴィヴィが無責任に言えば、その隣の俳優・伊勢谷が苦笑した。
「確かにね、そのワクワクのおかげで、視聴率はうなぎ登りだろうけれど、本当に放送事故があれば苦情殺到だしね」
審査員達は和やかに談笑しながら直前リハーサルを終えると、すぐに本番が始まった。
(ご、5時間か……。寝ないように気を付けないと……)
ヴィヴィはメイクさんに化粧をしてもらった小さな顔に微笑みを張り付け、目の前で国民的長寿番組の本番が進んで行くのを見つめる。
実はJ-POPに明るくないヴィヴィは、50組中半分以上の出演陣を知らなかった。
しかし事前のアンケートで、好きなアーティストを記入して提出していたので、その組の出番の前後のみ審査員として意見を求められ、ヴィヴィはほっとした。