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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章          

『今年2月に行われた平昌五輪の金メダリスト 兼 NHK杯金メダリスト』という肩書が紹介され、会場から暖かな拍手を貰った双子だったが、ヴィヴィは何故か不思議な気持ちになった。

(今年だったんだよね、オリンピックって……。

 なんか最近色々あって、もう随分と昔の事のような気がする……)

 他のコンサート会場への中継へと切り替わったので、ヴィヴィは足元に隠してあるペットボトルの水を手に取り、刺さっているストローに口を付けて喉を潤す。

 しかし、そこでふっと気を緩めたのが悪かった。





   『ほら、見てみろ……。この下には何十万、何百万の人がいる。

    ほとんどの者がお前の事を知っていて、その中にはファンもいるんだぞ?

    信じられないよな?

    そんなヴィクトリアが、こんな屈辱的な事、させられてるなんてな?』





 スパで匠海に詰られた言葉が、脳裏をよぎる。

 マスカラに縁取られたヴィヴィの灰色の瞳が、徐々に真紅のバルーンスカートへと落ちていく。

「………………」

(お兄ちゃんは、ヴィヴィがこんな風に人前に出る事、嫌なのかな……。

 裏では人に言えないような罪を犯しているヴィヴィが、

 テレビで馬鹿みたいに笑ったりしてるの見て、嘘吐きって思ってるのかな……)

 そう後ろ向きな事を考え、俯いてしまったヴィヴィの肘を、クリスがこつりと自分の肘で小突いてきた。

「……中継から、こっちに戻ってくる……」

 小さな声でそう忠告してくれたクリスにヴィヴィは頷き、足元にペットボトルを隠した。

 23:45。

 やっと5時間に渡った生放送が終わり、特にトラブルもなく、バックヤードでは皆が達成感に沸いていた。

「あっ! 年越しちゃうわっ!! お祝いしましょう、お祝いっ!」

 審査員同士や歌手達と写真を撮りまくっていると、尾木先生がそう言ってその場にいた十数人に、成人には用意されていたお酒を、未成年にはジュースを配ってくれた。

「年越し十秒前っ! ……5,4,3,2,1っ!!」

「A Happy New Year!!」

「明けまして、おめでとう~っ!」

「あけおめ~っ!!」

 皆が紙コップをくっ付けて乾杯しあい、双子もお世話になった方々へ乾杯と挨拶をしに回った。

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