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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章
ようやくお役目を終えた双子は、牧野マネージャーとNHKホールを後にした。
屋敷に辿り着いた双子は、どっと疲れていた。
「屋敷からNHKホールまで、600mしか、離れてないのに……」
クリスの発した言葉に、ヴィヴィも同意する。
「ね……。歩いて帰ってくれば良かったね……。あんなに混雑してるなんて……」
近所なのに帰宅するのに車で40分も掛かってしまい、もう時刻は元日の1時を過ぎていた。
「お二人共、遅くまでお疲れ様でした。バスの用意が整っておりますので、どうぞお早めにお休みください」
双子を待っていてくれた朝比奈は、新年の挨拶の後、そう言って二人を労ってくれた。
3階へと上がった双子は就寝の挨拶を交わすと、それぞれの私室へと下がった。
自分のリビングスペースに入ったヴィヴィは、白いL字のソファーにぐったりと突っ伏した。
「ね、眠い……。眠すぎて、死んじゃう……」
虚ろな瞳でそう大げさな事を呟いたヴィヴィに、朝比奈が苦笑する。
「30分程、仮眠されてはいかがでしょう? 少し寝ると頭がスッキリしますよ。湯に浸かって就寝されたほうが、疲れも取れて宜しいでしょうし」
そう提案してくれた朝比奈に、ヴィヴィは「そうす、る……ぐぅ……(-_-)zzz」と答えた途端、眠ってしまった。
その華奢な身体にブランケットを掛けた朝比奈は、懐中時計で時間を確認すると、クリスの部屋へと続く扉を開けて出て行った。
そしてその数分後――、ヴィヴィは何故かバスルームの洗面台の上に座っていた。
というか、座らされていた――匠海によって。
「お兄ちゃん、ヴィヴィ、お風呂まだ入ってないよ……?」
ヴィヴィは焦って、目の前に立つ匠海にそう言う。
「見れば分かる……。っていうか、化粧濃いっ」
匠海は呆れた顔でそう言うと、ヴィヴィを睨み付けるように見下ろしてきた。
(お兄ちゃん、ヴィヴィが化粧するの、嫌いだもんね……。っていうか、真紅のドレスに映えるようなメイクだから、濃いのはしょうがないと思うの……)
ヴィヴィは心の中でそう言い訳をすると、目の前の匠海の姿を見て不思議に思う。
「お兄ちゃん、どこか行ってたの?」
匠海は薄紫のドレスシャツにネクタイ、グレーのパンツを纏っていた。