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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章          

「ああ、年越しカウントダウンパーティーに、行っていた」

「ふうん。楽しそうだね。って、あれ……? まだ1時だよ……?」

(年越しのカウントダウン、って朝方までやりそうだけど……。それに、近所でやってたのかな……?)

 そのヴィヴィの疑問に、匠海がにっと笑う。

「まあな。用事を思い出して、帰ってきた」

「用事……? どんな……?」

 両親もどこぞやのカウントダウンパーティーに出掛け、呑んだ暮れている筈で、匠海が何の用で戻ってきたのか見当が付かないヴィヴィは、こてと首を傾げる。

「お前を抱く、って用事に決まってるだろう?」

 匠海はきっぱりとそう言い切ると、ヴィヴィが羽織っていたニットカーディガンを脱がせ、白とライトグレーのボーダーワンピも、いとも簡単に脱がせてしまった。

 白く光沢のあるロングキャミソールと下着だけの格好にされてしまったヴィヴィは、頬を染めて匠海を見上げる。

「眠気、覚めたか?」

「……う、うん」

(完全に、覚めました……)

 どもりながら頷いたヴィヴィに口の端で笑った匠海は、洗面台の上の棚を開け、そこからピンを探し出すと、妹の前髪を上にあげて留めた。

「…………?」

 何をするんだろうと匠海を見つめていると、兄はアイメイクリムーバーをコットンに含ませ、ヴィヴィの瞼に乗せてきた。

「……お兄ちゃん、聞いてもいい……?」

 両方の瞼にコットンを乗せられ、視界を遮断されたヴィヴィが、恐る恐る匠海に話しかける。

「なんだ?」

「どうして、お化粧の落とし方、知ってるの……?」

 そのヴィヴィの問いに、匠海から苦笑と共に答えが返ってきた。

「世の中には知らない方が幸せな事は、沢山あると思うが……?」

「………………」

 ヴィヴィの胸の奥、薄氷を踏んだ様な、ピシリという音がした。

(お兄ちゃんは……女性がメイクを落としているところ、見慣れてるんだ……)

 急に静かになったヴィヴィから、匠海はそのコットンを取り上げ、浮き上がったマスカラを拭き取った。

 両方のアイメイクを取った匠海は、今度はクリームタイプのメイク落としを手に取り、ヴィヴィの化粧の上に乗せて指の腹でマッサージし始めた。

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