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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第13章              

 食事を終え、ぞろぞろとダイニングルームを後にしていく家族だったが、ヴィヴィは壁際のオーディオセットに向かいその横からCDケースを取り出す。

 中の説明書きを取り出して読んでいると、いつの間にかクリスが隣に来て肩を引き寄せられていた。

 クリスの接している右側だけがとても温かい。

「どうしたの……?」

 斜め上から覗き込んでくるクリスに、ヴィヴィは答える。

「う~ん、和風の曲もいいなあと思って……」

「……スケート?」

「うん。箏(こと)の音、好きかも――」

 心に自然と染み入るような音色を奏でることもあれば、ふいに妙に艶めいた音も聴かせる。

「いいんじゃない……? 和風の曲、使ってるスケーター多いから、海外でも受け、いいと思う……」

 そう同意したクリスに、ヴィヴィは微笑む。

「いい曲あったら、来季使おうかな~。クリスもいつか尺八とか使ったしっぶい曲、滑ってみて?」

 クリスは表現の幅が広いから、何でも滑りこなせるだろうとヴィヴィはお願いしてみる。

「了解……」

 そう返事を返したクリスは、ヴィヴィの手の中からCDケースを取り上げ、その手を引いてどこかへ向かう。

「どこ行くの、クリス?」

 先をどんどん歩くクリスに、ヴィヴィ履きなれない草履でちょこちょこと付いていく。

 向かっている廊下の先には、防音室があるはずだが、まさか――、

「弾き初め――だって……」

 防音室の扉を開くと、和服を身に纏ったままニコニコとそれぞれの楽器をいじる両親と、その傍らで困惑しながら袴姿でピアノの蓋をあけている匠海がいた。

「やっときたか、双子ちゃん! Let’s play 初JAZZ!!」

 グレコリーのその呼びかけに応じて、ジュリアンがダカダカダカとドラムを叩く。

 ジャーンとスネアを叩いて「早く早く!」と急かす両親に、肩を竦めたヴィヴィとクリスはそれぞれの楽器を準備した。

「で、何するの?」

(和装でさあ……)

 ヴィヴィが長い振袖を朝比奈に襷(たすき)掛けにしてもらいながら、父を振り返る。

「う~ん。何がいい?」

(決めてないんかい!)

 と、またまた関西弁でヴィヴィは突っ込んでしまう。

 視線の先にいる匠海も苦笑いをしている。

「……Moanin」

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