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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第13章
バンドの中心に立ってトランペットを手にしたクリスがぼそっと呟くと、早々に ♪パッパパ~ラララ、パッパー♪ と有名なフレーズを奏でる。
それに自然に入っていける両親や兄妹の能力は、きっと長年の「父の英才教育の賜物」だろう。
ヴィヴィはヴァイオリンの弦を爪弾きながら、和服で渋いJAZZを奏でる家族を見渡す。
(ていうかさ……和洋折衷過ぎるでしょ、これ――)
と冷静に突っ込んだが、やがて楽しくなってきて「ま、いっか」と短い正月を楽しんだ。
初JAZZを満足いくまで楽しみ、やっと着物から解放された双子は、母ジュリアンにライブラリーに呼び出された。
「年頭に際し、二人に重大なお知らせがいくつかあります」
改まった様子で目の前の一人掛けソファーに長い脚を組んで座る母を、双子は心の中で「?」を浮かべながら見つめ返す。
「その一、貴方達のマネジメント会社が決まりました。はい、パチパチパチ!」
満々の笑みでそう言って一人で拍手をするジュリアンに、双子は一瞬顔を見合わせたが直ぐに、
「はぁ……?」
と間抜けな声を上げた。
(何をマネジメントしてもらうの……?)
耳慣れない職業の会社に、ヴィヴィが首を傾げる。
「僕達にマネジメントなんて……まだ必要ないでしょう?」
一足早く状況を察したクリスが疑問を呈す。
しかしジュリアンは、人差し指を顔の前でちっちっちっと振って見せた。
「今までは貴方達へのファンレター等はスケ連に送ってもらうことになってたんだけど、今回の全日本優勝で手におえないほどのファンレターや電話がかかってくるようになったから、マネジメント会社と契約することになったの。それにいつまでも朝比奈に負担かけてちゃ悪いし、マスコミ対応等はプロに任せたほうがいいでしょう?」
「マ、マスコミ対応っ!?」
思いもかけない言葉に、ヴィヴィが素っ頓狂な声を上げる。
「そうよ、貴方達は14歳で並み居る選手を押しのけて全日本シニアを優勝した、稀にみる逸材よ! 年末からじゃんじゃん、スケ連に取材依頼や番組出演依頼が殺到しているの。本当は紅白の審査員候補にも挙がっていたのよ。NHK杯優勝の村下佳菜子選手が出るべきだと断ったけど――」
「「はあ……」」