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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章          

(幸せすぎて、怖い……。

 優しすぎて、恐ろしい……)

 匠海が優しいのは常の事だが、それよりも遥かにそうされると、どうしても邪推してしまう。

 これは、『飴と鞭』として、その落差をくっきり鮮明にするための、

 計算された行為だったとしたら――?

「………………」

 ヴィヴィは脳裏に浮かんだそれを、瞬時に頭から追い出した。

(もしそうだったとして、じゃあ、自分はどうしたいの? 自分には何が出来るの?

 結局は兄の与える『飴』に群がり、『鞭』打たれても耐え、同じことを繰り返し、

 それでもいつか、兄が自分を振り向いてくれるのを、待つしかない――)

「ヴィクトリア? 痛かったか?」

 急に静かになった妹を心配そうに上から覗き込んでくる匠海に、ヴィヴィはふるふると頭を振り、うっとりと見つめる。

「ううん。気持ち良すぎて、呆けてた!」

 そう色気のない返事を返したヴィヴィにも、匠海は笑いながら妹の良いところを探り、掻き回してくれる。

「あぁんっ あっ はぅう……っ 気持ちいっ おにい、ちゃあんっ」

 ヴィヴィは唇を震わせながら、匠海の愛撫に感じ入る。

(だったら、ヴィヴィは、たくさん味わっておくの。

 お兄ちゃんが与えてくれる、甘く蕩けそうな大切な記憶を――)

「ヴィクトリア、舐めてごらん?」

 匠海はそう言うと、左指をヴィヴィの唇に這わしてきた。

 ヴィヴィは匠海の首に縋り付いていた両腕を解くと、兄の左手を両手で掴み、その指先を舐め始めた。

 全ての指を舐めようと思うのに、何故か気づくと中指ばかり舐めていた。

 根元からぺろりと舐め上げたり、第一関節からゆっくりと少しずつ舐めしゃぶりながら、徐々に深く口内へと含んでいく。

(やっぱり、甘い……、お兄ちゃんの躰……)

 前もキスをしていた際、如実にそう感じた事を思い出し、ヴィヴィは不思議に思う。

「ぁんっ あ、お兄、ちゃん? ヴィヴィって、どんな味、するの……?」

 妹の腰を掴んで文字通り掻き混ぜている匠海に、ヴィヴィは喘ぎながら尋ねる。

 すると匠海は腰の動きを止めてくれた。

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