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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第69章
「いやか?」
何も返事を返さないヴィヴィに、匠海は少し拗ねたような表情を見せてくる。
(本当に、ずるい男――)
ヴィヴィはその心の中で詰る言葉とは正反対に、満面の笑みで匠海に返す。
「まさか……。お兄ちゃんは本当に、ヴィヴィを虜にする天才ね?」
「ふ……。まだ虜になってなかったのか?」
そう自信満々に返す匠海の表情は、とても面白そうなそれで、ヴィヴィの単純な心臓はまたとくりと不正な脈を刻む。
「うふふ~。それは、秘密、なのですっ」
そう言って自分の唇の前に人差し指をかざしたヴィヴィに、匠海が白い歯を零す。
「じゃあ、もっと頑張ろう。俺のヴィクトリアが、本当に俺しか見えなくなるように――」
匠海はそんなずるい言葉を囁くと、ヴィヴィの唇の前の手を取り、ゆっくりと自分の指を絡ませた。
「なんか、それ……っ 凄く、ドキドキする……っ」
ヴィヴィは素直に言葉にした。
たかだか手を繋いで指を絡ませているだけなのに、それよりも凄い事を今まさにしているのに、そんな小さな触れ合いに心が躍る。
「純粋で本当に可愛いよ、ヴィクトリア……。じゃあ、手を繋いで一緒にイこうか」
切れ長の灰色の瞳にじっと見つめられ、ヴィヴィは恥ずかしそうに頬を染めながらも大きく頷いた。
「―――っ うんっ!」
匠海は片手を絡ませたまま、もう片方の掌でヴィヴィの腰を支え、下から突き上げてきた。
途端に軽いヴィヴィの躰が跳ね、振り落とされないようにしっかりと匠海の肩に縋り付く。
ぴたりと合わさった掌から、絡ませた指先から、ドキドキが広がっていくようだった。
(気持ちいい……、暖かい……、凄く、心が通じ合った気にさせてくれる……)