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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
スゥイング・ジャズのスタンダードナンバー、SING SING SING。
テーマやリフなど、いくつかのメロディーを数コーラスずつ演奏し、それぞれのメロディー間をドラム・ソロで繋いでいくという、ドラムのジュリアンには美味しい曲目だ。
クリスがトランペットのベルの前でミュートを使い、エロティックに奏でれば、ヴィヴィがシンコペーションで盛り上げる。
グレコリーがベースでJAZZのグルーヴを生み出せば、両親と一緒にリズムセクションを担当していた匠海が、そのピアノで痺れる様なソロを聴かせる
「く~~っ! いいねっ!」
グレコリーが両の拳を胸の前で握りしめ、喜びに打ち震える。
「やっぱり匠海がいると、音の広がりが全然違うわね~!」
ジュリアンが指の間でくるくるとスティックを回しながら、匠海に大きくウィンクする。
「それはどうも」
両親二人にそう言って笑った匠海は、双子に視線を移す。
いつも主旋律を奪い合うように奏でるクリスとヴィヴィは、
「あそこは、トランペットでしょ……」
「え~っ!? あれはヴァイオリンのほうが、聴かせられる!」
と言い合っている。
そんな双子が戯れる姿は、まるでゴールデンレトリバーの子犬の様に愛くるしい。
「ヴィヴィ、おいで」
名前を呼ばれて振り返った先、匠海がヴィヴィを手招きしていた。
「ん~?」
「連弾しよう」
その匠海の誘いに、ヴィヴィは驚く。
「えっ!? で、出来るかな?」
小さい頃はよく匠海と連弾したが、大きくなってからは経験がない。
「JAZZは即興演奏なんだから、何でもありだろう?」
匠海のその言葉に、ヴィヴィは一気に不安が吹き飛んだ。
「確かにっ!」
譜面上の主旋律をヴィヴィが、コードを匠海が奏で、それぞれアレンジを加えることにした。
「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」
匠海が曲名を提示し、ヴィヴィと視線を合わせると弾き始める。
ヴィヴィのアレンジを加えた主旋律に、匠海が合わせて和音で繋いでいく。
不意に匠海から提示されるメロディーをヴィヴィが受けて返せば、他の三人から面白そうな笑みが漏れる。