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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
(うふふ。お兄ちゃんの長くて綺麗な指が、ヴィヴィと一緒に音を奏でるのを見ているだけで、とっても幸せ~っ!)
そう有頂天になりながら、ピアノの前から離れたヴィヴィだったが、その目の間にクリスが立ちはだかった。
「ヴィヴィ……お勉強の時間……」
自分そっくりの薄い唇から発せられたその言葉に、ヴィヴィはがくりとうな垂れる。
「えっと……今日は、元日だったり、するのですが……」
無駄とは知りながら一応抵抗してみたヴィヴィの主張を、『教育兄』は正論で切り捨てた。
「受験生に、盆暮れ正月&クリスマスは、ありません……」
「……ははあ~~、クリス様……」
ヴィヴィはそう言葉だけでひれ伏すと、ヴァイオリンを片付けて私室へと戻った。
私室に戻ったヴィヴィは咽喉の渇きを覚え、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに移す。
それを半分ほど飲んだ頃、
「ヴィヴィ、ちょっと来てくれるか?」
匠海が互いの部屋の境界線である扉の向こうから顔だけを覗かせ、ヴィヴィを呼んでくる。
「え……? なあに?」
ヴィヴィはそう尋ねながら、履きなれない草履の足をちょこちょこと滑らせ、匠海の部屋との境界へと寄って行く。
シックにまとめられたリビングを見渡しても匠海はおらず、ヴィヴィは首を傾げながら唯一開いていた寝室への扉をくぐった。
その途端、中から手を引かれて抱き寄せられたかと思うと、寝室の扉がパタリと閉められ施錠された。
「え……っ? お兄――」
匠海を呼んだその声は、兄の口内に吸い込まれた。
「んんっ!? ぅん? ……っ んぅ……」
驚愕に目を見開いたヴィヴィが、抱き込まれた匠海の胸に手を付いて離れようとするが、さらに腰を抱き込まれる。
(お兄ちゃん……? 駄目だよ、まだ、朝の10時だよ……?)
最初は強引だった口付けも、徐々に優しいものになり、ヴィヴィの反応を見ながら舌を絡ませ、敏感なところを探りながら舐め上げられる。
(でも、キスだけなら、いいや……。っていうか、嬉しい……。
ヴィヴィとキスしたいって、思ってくれたんだ……っ)
ヴィヴィも匠海に応じ、小さな舌を絡ませ始める。