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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
「今までヴィクトリアが着た着物、ほとんど覚えてる」
「ヴィヴィもっ 特に去年のお兄ちゃんの黒の袴姿! ヴィヴィ、ずっとちらちら盗み見してたんだ~。お兄ちゃんの綺麗な黒髪と凛とした雰囲気に、とっても似合ってて」
昨年の匠海の袴姿を思い起こし、ヴィヴィはうっとりと瞳を細める。
「ああ、ヴィクトリアはその頃から、俺の事好きだったんだもんな?」
そうからかってくる匠海に、ヴィヴィは振袖を纏った肩を竦めて見せる。
「うん……。ごめんね? 盗み見、なんかして……」
「なんで謝る……? 恋する少女、って感じで、可愛いよ」
そう囁いて微笑んだ匠海の黒髪は、いつもよりウエット感があり、なんだか兄の持つ男の色気を増幅させていて、ヴィヴィはどきりとした。
「――っ は、恥ずかしい……っ」
頬を染めて俯いたヴィヴィの視線の先、匠海の着物が目に入る。
橡(つるばみ)色――濃い灰色、の紬の襟から覗く、海老茶の半襟が粋で、日本人らしい静謐な空気を纏う匠海の魅力をより引き立てている。
(ドキドキ……する……。いつものお兄ちゃんと雰囲気違うし、なんか、抱きしめて欲しくなる……)
いつも以上に素敵な兄を見詰めるのが気恥ずかしくて、ヴィヴィは匠海の股の間でその片腕に背を預けたまま戸惑っていた。
そんな妹の細い顎に指を添え上を向かせた匠海が、ゆっくりとヴィヴィに覆い被さってくる。
柔らかく何度も唇の表層を啄ばまれ、ヴィヴィは唇をワザと窄めた。
「ヴィクトリア……?」
「……今日のお兄ちゃん、素敵すぎて……、ヴィヴィ、まともに見れない……」
視線を外しながらもそう素直に胸の内を語ったヴィヴィに、匠海が苦笑する。
「そんなの、俺だって同じだ……ヴィクトリアが綺麗で、いつも以上に可愛らしくて、襲いたいのを必死に我慢してる」
「……え……? ……っ んっ んん……っ」
匠海の独白に驚いて視線を上げたヴィヴィに、兄はまた唇を重ねてきた。
今度はやや強引にヴィヴィの舌を絡め捕り、吸い上げてくる。
(あ……だめ、なのに……、きもち、いい……)
唇へのキス一つでも、それが愛しい匠海からのものであれば、ヴィヴィの躰は簡単に火照り始める。