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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
黒地の着物の裾を肌蹴させたまま、ぼんやりと床にへたり込んでいるヴィヴィの視界の中、焦茶色の革靴の両足が現れた。
ほとんど乱れていない金色の結髪の頭を静かに上げたヴィヴィの目の前には、洋服へと着替えた匠海が立っていた。
「なんだ。まだいたのか。早く自分の部屋に戻れ。朝比奈に不審に思われる」
そう発した匠海の姿には、乱れたところが一つもなかった。
いつも美しくて、凛として、ヴィヴィが生まれてからずっと憧れ続けている兄の姿が、そこにはあった。
「……うん。ごめんね、お兄ちゃん」
にこりと微笑んだヴィヴィは、その場ですっと立ち上がると、片脚に引っかかっていた下着を履いた。
着物の裾を直し全身にさっと目を通して、不備がないか確かめる。
匠海が鍵を開けて寝室から出た後に続き、ヴィヴィは自分の私室への扉を開いた。
その視線の先、ヴィヴィの寝室から出て来た朝比奈と目が合う。
「ああ、お嬢様。匠海様のお部屋にいらしたのですね?」
銀縁眼鏡の奥の瞳が柔らかく細められ、自分を見つめてくる。
「うん。あ、お着物片づけるんだよね?」
微笑んだヴィヴィが、自分の纏っていた着物を見下ろす。
匠海の言った通り、一見ではどこも着崩れては見えないだろう。
「ええ。帯、緩めますよ?」
傍へ寄ってきた朝比奈の手によって、丁寧な手付きで帯が解かれていく。
一番苦しかった腰紐を解かれ、着物の前合わせがはらりと解かれた途端、ヴィヴィの膣口からどろりとしたものが溢れ出てきた。
「ん……っ」
思わず小さな声を漏らしたヴィヴィに、主の後ろに回って着物を脱がせていた朝比奈の手が止まる。
「お嬢様?」
「あ、あは……。お着物苦しかったから、解放された~って……。変な声出して、ごめんなさい」
そう苦し紛れの言い訳をしたヴィヴィに、朝比奈は笑いながら両の腕から着物を抜き取った。
「ああ、締め付け過ぎましたかね? お嬢様はよくお動きになられますから、着崩れないようにと若干強めに締め付けてしまいました」
「どうせ~。『お子ちゃま』ですよ!」
着物を腕に掛けながらヴィヴィの前に来た朝比奈に、ぷうと頬を膨らませてみせると、苦笑された。