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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章          

「はい。いいですよ。髪飾りもお取りしますか?」

 草履も脱いで白い肌襦袢だけの格好になったヴィヴィに、朝比奈が終わりを告げた。

「大丈夫。自分でやる。あ、楽器演奏して汗かいちゃったから、シャワーも浴びるね?」

 襦袢の袖を掴んでぱたぱたと扇いで見せたヴィヴィに、着物と小物を纏めていた朝比奈が顔を上げる。

「では、お湯を張りましょうか?」

「シャワーで大丈夫。ありがとう」

 そう言って微笑んだヴィヴィは、バスルームへと入り扉を閉めた。

 紐を解いて肌襦袢を脱ぎ、ブラとショーツになったヴィヴィは、ゆっくりと両腰に指を這わせ、ショーツを下していく。

 そこは白い粘液で汚れ、脚の付け根はショーツでは受け止めきれなかった、匠海の白濁で汚れていた。

「何……、やってるんだろう……」

 静かなバスルームに、自問自答するヴィヴィの擦れた声が響く。




   『はぁ……もう、分かんない……。お兄ちゃんの事、愛してるのに……。

    どうしてこんな事、考えてしまうのか……』



 今朝、「実の兄である匠海を、男として愛した理由」を考え悩んでいた自分が、兄の寝顔を見ながら呟いてしまった心の声が、ふと脳裏をかすめる。




 違う。

 本当は分かっている。
 
 気づいている。

 自分の中に、戸惑いや迷いが生じてきた事。




 汚れたショーツをじっと見つめていたヴィヴィの視線がゆっくりと上がり、目の前の大きな鏡に映る自分に注がれる。



(ヴィヴィ……本当にお兄ちゃんのこと、愛しているのか……

 自信が無くなりかけている……)


 
 まるでその心を証明するように、鏡の中の自分は、何故か輪郭があやふやに映って見えた。









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