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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
そう言って妹の頭を撫で始めたクリスに、ヴィヴィは申し訳ないやら情けないやら、他にも双子の兄を最悪な形で裏切っている罪悪感に苛まれ、まるでそれらから目を逸らす様にぎゅっと瞼を瞑った。
(ごめんなさい、クリス……、
ヴィヴィはクリスにそんな風に優しく、
大切にして貰えるような、人間じゃないの。
狡くて、汚くて、馬鹿で、自己中心的で、家族も周りも裏切ってる、
最低最悪な人間なの……)
心の中ではそう必死に目の前のクリスに謝っているのに、躰はまるで全ての辛い事から逃げ出そうとする様に、兄のシャツの胸に縋り付いた。
「ヴィヴィ……可愛い、僕の妹……。愛してるよ……」
まるで寝言のようにそう囁いたクリスは、柔らかくヴィヴィの躰を包み込み、そして二人は本当に眠ってしまった。
「もう本当に、双子の天使が寝ているのかと思いましたよ」
朝比奈はそううっとりと呟きながら、ヴィヴィとクリスに付き添い、大理石の階段を下りていく。
「はは……」
乾いた笑いを返したヴィヴィが、隣を歩くクリスを見上げると、髪にちゅっとキスされた。
二人がソファーで寝てしまった一時間後、ランチの為に呼びに来た朝比奈が、双子の寝姿を見て『天使』と思ったらしい。
(頼むから、お兄ちゃんの前ではそんな話、しないで……)
別にヴィヴィには後ろめたいところは何一つないのだが、以前、匠海にクリスとの間を疑われたことがあり、もう同じ轍は二度と踏みたくない。
そしてその匠海はランチには顔を出さず、五十嵐に尋ねたところ、出掛けたらしい。
「では、お気を付けて。お帰りは20時過ぎですね? お待ちしております」
「「行ってきます」」
双子にそれぞれiPadを手渡した朝比奈に、二人はハモって挨拶すると、リンクへと向かう車に乗り込んだ。
7時間に及ぶレッスンは、先ほどの休息のお陰で充実したものになり、屋敷に戻った双子は夕食を取ると、予定通り3時間勉強した。
「12時か……。ちゃんと寝るんだよ、ヴィヴィ?」
クリスの書斎でテキスト等を片付けて立ち上がったヴィヴィを、兄が見上げてくる。