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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第70章
「うん。いつもありがとう、クリス。愛してる……おやすみなさい」
椅子に座ったままのクリスに、屈んでその頬におやすみのキスをしたヴィヴィは、片腕で兄の背をそっと抱く。
「僕もだよ。おやすみ」
クリスもヴィヴィの頬にキスを落とすと、ギュッと抱きしめて体を離した。
私室に戻ったヴィヴィは、朝比奈の用意してくれたお風呂に浸かり、一日の疲れを揉み解した。
ついバスタブでうとうとしてしまったヴィヴィは、朝比奈に声を掛けられて起こされた。
「やっぱり危なっかしいですね、お嬢様は」
「……面目ない……」
朝比奈にそう言われてしまっては、ヴィヴィは何も反論出来なかった。
ソファーに座り、ガス入りのミネラルウォーターで咽喉を潤していたヴィヴィに、朝比奈が話しかけてくる。
「お嬢様、本日届きました年賀状やカードは書斎のデスクに置いてあります。確認したところ、出し忘れや戻ってきたものも無いようですので、目を通されるようなら見ておかれて下さい」
「うん。ありがとう。もう寝るね?」
「はい、お休みなさいませ」
「おやすみなさい」
折り目正しく一礼して退室する朝比奈を見送ったヴィヴィは、ちらりと匠海の部屋との境界線へと視線を移す。
物音一つしないそこは、部屋の主は不在らしい。
「………………」
ヴィヴィは少しでも寝ておこうと立ち上がり、寝室へと向かったが、その扉の前で立ち止まる。
(どうせお兄ちゃんの寝室で抱かれるんだから、そこで待ってればいいんだよね……?)
そう思って歩き出したヴィヴィだったが、その薄い唇から、小さな苦笑と共に言葉が漏れた。
「どうせ、って……」
(ふふ……、苦行じゃないんだから……)
何だか自分のその考えが妙に面白く感じて、ヴィヴィの頬が緩む。
書斎に入って朝比奈が整理してくれた年賀状の束を掴むと、全ての部屋の照明を落とし、匠海の寝室へと向かった。
暗くて、当たり前だが静かなベッドによじ登ったヴィヴィは、ベッドサイドの灯りを頼りに、年賀状の確認を始めようとした。
が、すぐに思い直り、纏っていた冬用の温かいナイトウェアを脱ぎ捨て、全裸になった。
それをベッドの隅に放ると、羽根布団の中に潜り込み、年賀状のチェックを始める。