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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章
14:30。
神社に到着した双子とジュリアンは、匠海とグレコリー、付添の朝比奈と合流して、初詣へと向かった。
「1月2日でも多いわね~、参拝客」
人波に流されるように歩きながら、ジュリアンが嘆息する。
「明日のほうが、良かったんじゃない?」
そうヴィヴィが答えれば、朝比奈に「明日は旦那様と匠海様の、ご予定が合いませんので」と説明される。
拝殿へと続く急な石段を登り始めたヴィヴィの手を、隣を歩いていたクリスが握ってきた。
「ん……?」
「ヴィヴィ、なんか転げ落ちそうだから……」
心配そうに見下ろしてきたクリスに、ヴィヴィは頬を膨らます。
「わたしゃ、ご老体かね……?」
「こんな可愛いお婆ちゃんなら、大歓迎だよ……」
そう言って金色の髪にキスを落としてきたクリスに、近くから「きゃあっ!!」と黄色い悲鳴が上がった。
「へ……?」
ヴィヴィが不思議そうに声のしたほうを振り返ると、そこにはこちらを見て頬を赤らめている、ヴィヴィ達と同じ年頃の少女達がいた。
「ほら、やっぱり篠宮選手だよっ!」
「きゃ~っ! 可愛いっ 格好いいっ」
「顔小っちゃいっ! お人形さんみたいっ」
口々にそう言い合う少女達に、ヴィヴィは「はは」と愛想笑いをする。
(帽子とサングラスとマスク……、まだ必要か……?)
もうオリンピックが終わって1年は経とうとしているのに、と心の中で思ったヴィヴィの前、石段を登っていた父グレコリーが、双子をちらりと振り向いた。
「ふ……、思い出すな。双子が歩き始めた頃のこと」
「「え……?」」
双子がそう言って、父を見上げる。
「ヴィヴィが短い“あんよ”と“おてて”で、よちよち石段這い登ってて、その後ろで朝比奈がおろおろ見張ってて。目の前では匠海が辛抱強く、お前がよじ登ってくるのを待ってた」
そう懐かしそうに瞳を細めた父に、ヴィヴィが尋ねる。
「クリスは?」
「ああ、クリスは3段くらい登って、“おてて”が汚れるのが嫌になって飽きたらしくて、ジュリアンに抱っこされてた」
「あははっ!」
ヴィヴィが声を上げて笑う。
「覚えてない……」とクリス。
「ダッドは何してたの?」とヴィヴィが尋ねれば、
「写真と動画、撮ってた」と父は顔の前で、指でカメラを構えるポーズをして見せた、