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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章
「ちゃんとデータとして残っていますよ。皆様がご結婚される時、すべて纏めてお渡ししますね。皆様のお子様にお見せできるように」
そう言って微笑んだ朝比奈に、ヴィヴィも微笑んだ。
「うん……」
石段を登り切り、10分ほどしてやっと拝殿に辿り着いた一家は、お賽銭を放り、二礼二拍手して、目を瞑って神頼みをする。
(ええと……、周りのみんなが健康で過ごせますように……。充実した一年になりますように……)
そう心の中で唱えて瞼を上げたヴィヴィの隣り、匠海がまだ目を瞑って両手を合わせていた。
(お兄ちゃんが、ヴィヴィを愛してくれますように、って神頼みしても、神様はそんな罪深いお願い事、叶えてなんてくれないよね……?)
そう思いながら一礼したヴィヴィは、隣にいたクリスが後続の人に場所を譲っているのに、着いて行った。
なんとかお参りも済ませた一行は、毎年恒例のおみくじを引く事となった。
「去年、匠海と双子は大吉だったんだよな? 匠海は留学も順調だし、双子は見事オリンピックも世界選手権も優勝したし、当たるんだろうな~、ここのおみくじは」
そう言いながら、楽しそうにおみくじを選ぶ父に、
「今時のおみくじなんて、客商売だから、吉以上しか出ないんじゃないかな? 俺、周りで凶引いてる人間、見たことないけれど?」
と匠海が続けながら、おみくじを引く。
「……じゃあ、今、見る……?」
そう虚ろな声と表情で、父と兄を見つめるクリスの手元を、匠海が覗き込む。
「え……? まじかっ!? 初めて見たぞ、凶引いた奴……」
「あらまあ……、昨年に運を使い果たしちゃったかしらね?」と母。
「え~? 見せて? ……ホントだ、凶だっ! 初めて見た~。写真撮らせて!」とヴィヴィ。
「そう言う、ヴィヴィは……?」
人の不幸を喜ぶヴィヴィに、じと目を向けてきたクリスに、
「ん~? ヴィヴィくじ運、良いからね~。……どれどれ……」
ヴィヴィがそう自信満々でおみくじを開いていくのを、クリスが隣から見下ろしてくる。
「「………………」」
頭をくっ付けるように、ヴィヴィのおみくじを覗き込んでいた双子は、同時に黙り込んで固まった。
「どうした? お前達?」
グレコリーがそう言いながら、反対側から覗き込み、また固まった。