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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章              

「何……? 何なのよ?」

 ジュリアンがそう言って、ヴィヴィの手からおみくじを奪い、読もうとするが、

「匠海、これ、何て読むの?」

 日本語が不得手なジュリアンが、隣に立っていた匠海にひょいと渡す。

「……大凶……だね」

 そう読み上げた匠海に、ジュリアンが首を傾げる。

「大凶って、凶より凄いのよね?」

「ああ、そんなおみくじが存在することさえ、知らなかった……」

 匠海がそう追い打ちをかけるのを、ヴィヴィは恨めしそうに見つめた。

 結局、


  グレコリー   吉

  ジュリアン  中吉

  匠海     大吉

  クリス     凶

  ヴィヴィ   大凶

 
という結果に終わった一家は、それぞれのおみくじを黙読したり、交換して声に出して読んだりして、騒いでいた。

「あれ? 朝比奈、引かなかったの?」

 ヴィヴィがそう言って、黒いコートを纏った朝比奈を見上げれば、「私は大丈夫です」と微笑んでくる。

「え~? 引こうよ~! 朝比奈もヴィヴィと同じ、大凶、引こうよ~~っ!」

 そう無茶振りするヴィヴィに、匠海が拳骨を落とす。もちろん全然痛くなどない。

「ヴィヴィ、お前、最低すぎる……」

 呆れたようにそう言ってくる匠海に、唇を尖らせて見せたヴィヴィは、困っている朝比奈の腕を掴んで、おみくじ売場まで引っ張っていった。

 しょうがなくおみくじを引いた朝比奈の手元を、ヴィヴィが覗き込む。

「……大吉……」

「ですね……」

 申し訳なさそうにそう返した朝比奈に、ヴィヴィは顔を上げてにっこりと微笑む。

「良かったね! じゃあ、その幸運を今年、凶のクリスと大凶のヴィヴィにも、分けてね?」

「勿論です、お嬢様」

 そう言って、銀縁眼鏡の奥の瞳を優しく細めた朝比奈は、ヴィヴィの白いコートの背に手を添え、皆の元へ戻るよう促した。

 凶を引き当てたクリスは、おみくじ結び処にある樹木に、くじを結び付けていた。

 ヴィヴィはというと、握っていたおみくじを再度開く。

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