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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章              



  天の下 国原くらし み空ゆく

  月の光は さやか なれども



  伏して見れば山野は暗く、仰げば真如の月が照っている。

  その接し会ったところに立っている自分を、見失ってはならぬ。

  此処で静かに思慮を深め、目標に向かって一歩を進めなさい。



  願望 : 急には思う様にはならぬ

  縁談 : 本人同士の意思通じ方が足りぬ

  交際 : 親切だと思い込むといけない

  病気 : 回復がおくれる

  転居 : やめた方がよい

  事業 : 人の口車に乗るな

  試験 : 目上の人の意見に従え

  産児 : 丈夫な児が生まれる



 そう英語で読み上げるヴィヴィの隣、聞き入っていたジュリアンが、口を開く。

「あらやだ……病気の回復が、遅れるですって? ヴィヴィ、他はどうでもいいけど、怪我だけはしないようにね?」

「はあ……他はどうでもいいんだ……」

 虚ろな目で母を見上げれば、

「試験……目上の人の意見に従え……僕の事、だね……?」

「ヴィヴィ、超、従ってるし……」

 クリスにもそのまま虚ろな目を向ける。

「唯一良い事書いてあるのが、産児って……。結婚もしてないのに」

 そう言って落ち込むヴィヴィの金色の頭を、父がその大きな掌で撫でてくる。

「ほう? もう初孫を見せてくれるのか? ヴィヴィは親孝行ものだね~」

「いや……ボーイフレンドすら、いないんですけど……」

 そう突っ込んだ時のヴィヴィの瞳が、今日一番の淀んだ眼だった。

(伏して見れば山野は暗く、仰げば真如の月が照っている。

 その接し会ったところに立っている自分を、見失ってはならぬ。……か。

 ヴィヴィは、足元を見下しても、空を見上げても、暗闇で大差ないけれど……)
 
 大凶の写真を撮って、樹木に結びつけたヴィヴィの隣、匠海もおみくじを結んでいた。

「お兄ちゃん、大吉なんだ……、いいね~」

「変えてやろうか?」

 そう面白そうに見下ろしてきた匠海に、ヴィヴィは首を傾げて見せる。

「それって、ご利益あるの?」

「無いんじゃない?」

「じゃ、駄目じゃん……。もっとお賽銭しておけばよかった……」

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