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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章
とほほと肩を落とすヴィヴィに、近づいてきたクリスが呟く。
「そういう、問題なの……?」
「ん~、取りあえずそれで、ヴィヴィの心は紛れるから……」
「なるほど……。僕も凶だから、人のこと言えない……。ヴィヴィ、人多いからはぐれないでね……」
とぼとぼと皆の後を着いて来るヴィヴィを見て、クリスがその手を繋いでくる。
「もう、迷子になるような年じゃないよ……」
そう言って余計肩を落としたヴィヴィに、匠海が振り返る。
「社内の放送で『迷子のお呼び出し』するのだけはやめてくれよ? 呼ばれるこっちが、恥ずかしいから」
「スマホで誰か呼ぶもんっ! お兄ちゃんの意地悪、キライっ い~だっ!」
心底不貞腐れたヴィヴィが、白い歯を見せて「い~っ!!」として見せると、匠海が、
「どんだけ、ガキなんだよ……」
と呆れ果てた。
「あらやだ。新年早々、ケンカしないでよ? あんた達、仲直りするのに異常に時間掛かるんだから!」
ジュリアンのその指摘に、ヴィヴィの手を引くクリスも、うんうん頷いて見せる。
「ふわ~~い……」
そう生返事をしたヴィヴィは、空いている方の掌を口に添え、ふわわとあくびをした。
「じゃあ、グレコリーと私は、用事があるから、貴方達、先に帰りなさい」
駐車場まで戻ったところで、母はそう言って、自分が乗ってきた赤いスポーツカーを指差した。
「は~い、ふわわ……」
そうヴィヴィが間延びした返事とあくびを漏らせば、その手を引いたままのクリスも伝染したように、
「ふわわ……」
とあくびを始めた。
「ディナーには戻るから、皆で一緒に食べような?」
そう言って、ヴィヴィ、クリス、匠海それぞれの頭を撫でなでした父に、
「うん、ダッド! また後で~」とヴィヴィ。
「待ってる……」とクリス。
「俺、もう22歳なんですけど……」と匠海。
それぞれの返事に破顔した子煩悩な父は、「じゃあね」と言い置くと、母と腕を組んでスポーツカーのほうへと行ってしまった。
兄妹3人と助手席の朝比奈を乗せた黒いリムジンは一路、松濤の篠宮邸へと向かって走り出した。