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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章              

 匠海のそれは長い指先を使い、器用にヴィヴィの指先を解すと、上から指を絡ませ始めた。

 ヴィヴィの指の間を第一関節、第二関節と辿るように、匠海が指先を伝わせてくる。

 突如、ヴィヴィの心臓は早鐘を打ち始めた。

 車の走行音しかしていなかった耳の中、いきなりどくどくと血の吹き出すような鼓動が木霊する。

 指の付け根に匠海の指先が触れる寸前、ヴィヴィはさっと自分の左手をその中から引っ込めた。

「……――っ」

 自分でも驚くほど、その心は動揺していた。




     『お兄ちゃんっ ヴィヴィを、離さないでっ!

      ずっと、そばに置いて……っ!』

     
     『それは、俺の台詞だ――』




 両手を絡ませて躰を繋ぎ合せた時、思わず零れてしまったその本音に、兄が返してきた返事。

 思わずよぎったその言葉を、ヴィヴィはぐっと唇を噛み締めて、心の中から追い出した。

(嘘……吐き……。

 嘘、吐き……。

 嘘吐き――っ!!!)




     『昨日、何処に泊まったの――?』




 たったその一言さえ尋ねる権利を、自分には与えてはくれないくせに……。








 本日の予定を全て終え、朝比奈に就寝の挨拶をし終えた数分後、案の定匠海がヴィヴィを呼びに来た。

(今日も『鞭』なんだ……。

 明日が一緒にいられる最後の日だから、明日は『飴』……なのかな……?)

 もうヴィヴィは、ノック音ひとつで『飴』か『鞭』か、聞き分けられる。

「車の中で、何で手を引いた?」

 暗い寝室の中、早々に全ての衣服を脱いでしまった匠海は、ヴィヴィにも脱ぐように命じてきた。

 冬用のナイトウェアを脱ぎ、白い肢体を露わにしたヴィヴィは、黒いシーツの上でにこりと微笑む。

「誰かに、見られるかと思って……。それだけだよ?」

「ふうん」

 そう短い相槌を返してきた匠海の陰茎は、もう既に逞しくそそり立っていた。

 ヴィヴィの灰色の瞳が、そこへと注がれれる。

(昨日、他の女を抱いたもので、ヴィヴィを、貫くの……?)

「なんだ?」

 妹の視線に気づいて尋ねてきた匠海に、ヴィヴィは視線を上げる

「ううん。大きいなって、思っただけ」

 微笑んでゆっくりと首を振りながらそう言ったヴィヴィに、匠海は眉を眇めて見せた。

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