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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章              

 自慰と、兄の陰茎を使って快楽にふけるのと、何の違いがあるのだろう。

 そう一瞬頭の中に疑問が浮かんだが、それさえも考える気にならなかった。

 ただ心の中が空虚で、兄を満足させながら、自分も受け入れる準備を整えなければという使命感だけで、お互いの性器を擦り付けていた。

 ヴィヴィが腰を動かす度、その狭く細い背中の上で、絹糸のような髪がさらさらと揺れる。

 無心に腰を動かしていたヴィヴィは数分後、匠海の手によって止められた。

「なんだ……? 体調、悪いのか?」

 匠海がそう言うのも無理はない。

 喘ぎ声一つ上げずに動いていたヴィヴィのそこは、まったく濡れていなかった。

「ううん。もう、入れてもいい? 多分、中は濡れてるんじゃないかと思うの」

 後ろを向いたまま、可愛らしく首を傾けたヴィヴィに、匠海が溜め息をついた。

「いや、今日はもういい……。自分の部屋に戻りなさい」

 そう冷静な声で命令してきた匠海に、兄の腰の上のヴィヴィの躰がぎくりと大きく震えた。

「……っ いやっ!! ヴィヴィの事、捨てないで……っ!」

 そう掠れた声で叫ぶように発したヴィヴィに、さすがに妹の様子が変だと察したらしい匠海が、上半身を起こす。

「ヴィクトリア……?」

 匠海のその声に、ヴィヴィははっと我に返った。




  (もう……、『自分』をお兄ちゃんの前で、絶対に出しちゃ駄目。

   そうでないと、ヴィヴィは本当に、スケートさえも、失ってしまう――)




(そう……初めてお兄ちゃんから『鞭』を与えられた日、確かにヴィヴィはそう決意した筈……なのに……)

「……ごめん、なさい……」

 ヴィヴィは自分でも驚いて、ネクタイで拘束された両手で口を覆う。

(ヴィヴィ……何言って……っ)

 匠海は後ろからヴィヴィの躰に両腕を回すと、自分の胸の中に抱き込んできた。

「捨てるわけ、ないだろう? お前は『俺のもの』なのに……」

「うん……」

 自分を包み込んでくれる大きな胸に、逞しい腕に、暖かな体温に、ヴィヴィの躰はほっとしながらも、その心の奥底では、自分を保つのに精一杯だった。

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