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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章              

(たぶん、バスルームに、行ったんだよね……? 追いかけたら、許してくれるかな……)

 そう思ったヴィヴィは、だるい躰に鞭打ち、立ち上がろうとし、自分の両手がまだ拘束されたままだったことに気付く。

 両手首を合わせて2重に巻かれたそれは、上で綺麗なリボン結びにされていた。

 何故かそれを妙に感じながら、藍色のネクタイの端を唇で挟んだヴィヴィは、自分で拘束を解いた。

 ベッドのすぐ下に落ちていたナイトウェアに気づき、それを取ろうとベッドから下りようとした時、ヴィヴィは胃が引き連れる様な違和感を覚えた。

(なんか……気持ち、悪い……?)

 胃の辺りに掌を添えながらベッドを降りたヴィヴィは、ナイトウェアを拾い上げ、寝室から出た。

 暗いままのリビングの奥、唯一明かりが漏れているバスルームからは、シャワーの音がしている。

 ヴィヴィがそちらに足を向けようとした時、さらに胃が気持ち悪くなった。

(……お兄ちゃんと一緒にいて、吐いちゃったら、嫌がられるよね……?)

 自分も兄の前でそんな“そそう”をしたい筈もなく、ヴィヴィはしょうがなく自分の私室へと戻ることにした。

(明日、謝ろう……)

 自分の暗いリビングを裸のまま通り過ぎ、バスルームに入ったヴィヴィは、手探りで壁にある照明パネルを点ける。

 ぱあと明るく照らされた見慣れたバスルームにほっとして、シャワーを浴びようとしたヴィヴィの脳裏に、ふと先程の記憶が過ぎる。




    いつも通り逞しく、そそり立った、兄の昂ぶり。

    『昨日、他の女を抱いたもので、ヴィヴィを、貫くの……?』
    
    自分の中を押し広げていく、硬くて太いその感触。




「……――っ」

 ヴィヴィは両手で口元を抑えると、奥のトイレに駆け込んだ。

 違和感のあった胃が、下から絞られるようにぎゅうと引き攣れ、中のものを押し上げてくる。

「ぅう――っ ……っ」

 何度もえづいて戻してしまったヴィヴィは、ぐったりとしながらもなんとか水を流すと、洗面台まで戻り、口をゆすいだ。

(なんで、今さら……こんなことで……)

 ヴィヴィは濡れた口元をタオルで押さえながら、不思議に思う。

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