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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第71章
暗いリビングを抜け、くぐった扉は――匠海の部屋へのそれ。
バスルームの明かりはすでに消えており、ヴィヴィは寝室の扉を開ける。
いつも通り薄暗い寝室の中、キングサイズのベッドの上にその部屋の主は眠っていた。
ヴィヴィは静かにベッドによじ登ると、黒い羽根布団を捲くり、その中に躰を滑り込ませる。
妹に気付いてか、ただの寝返りか、匠海はヴィヴィに背を向けるように寝返りを打った。
目の前に広がる裸のままの匠海の背に、ヴィヴィはそっと片手を添える。
起きる気配もない事を確認すると、ヴィヴィは薄い唇を開き、小さな声で囁いた。
「お兄ちゃん……、好き、よ……。愛してる……」
その声は、まるで棒読みで、何の感情も入っていないように聞こえた。
(………………?)
ヴィヴィは内心首を捻ると、もう一度同じ台詞を、今度は心を込めて囁く。
「お兄ちゃん……、好きよ……。愛してる……」
今度はとても気持ちが入っているように聞こえた。
自分で聞いても愛らしく、うっとりと恋に恋している少女のそれに聞こえた。
その自分の台詞に満足そうに微笑んだヴィヴィは、もう片方の掌も匠海の背に添えた。
「ヴィヴィは、お兄ちゃんの傍にいるの……」
まるで自分に言い聞かせるように呟いたヴィヴィは、やがて何かから目を背けるようにぎゅっと瞼をつむると、匠海の背に自分の額をそっとくっ付けた。