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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

「さようでございましたか。一応確認しておきますが、16歳のお嬢様は、まだ飲酒されてはなりませんよ?」

「もちろん。まだお酒には興味ないから、安心して?」

(逆に、周りが飲ませたがるから、困ってるくらいだよ……)

 心の中でそう付け足したヴィヴィに、五十嵐が頷いて返す。

「良いお返事です。ノンアルコール・カクテルでも、お作りいたしましょうか?」

「うん! 見ててもいい?」

 ヴィヴィは黒皮のソファーに腰を下ろすと、大きな瞳を輝かせて、五十嵐の手元を覗き込む。

「ええ、もちろんです。これは、セーフ・セックス・オン・ザ・ビーチといいます」

 五十嵐は、ピーチネクター、クランベリージュース、パイナップルジュースを、氷を湛えた縦長のグラスに注いでステアしたものを、ヴィヴィの目前に置いてくれる。

「凄い名前だね?」

「そうですね。アルコールの入ったカクテルに、セックス・オン・ザ・ビーチという名のカクテルがありますので、それのセーフ(安全)版と言ったところでしょうか? ちなみにウォッカ、メロンリキュール、フランボワーズリキュール、パイナップルジュースで作ります」

 その五十嵐の説明に、ヴィヴィは笑顔になる。

「へえ、なんか聞いてるだけで、美味しそう~」

「ええ、とても人気のカクテルですよ」

 五十嵐がそう返した時、バスルームの扉が開いて匠海が出てきた。

 黒いバスローブ姿で、髪は濡れたままだ。

「匠海様は、シャンパンでよろしいですか?」

「ああ、頼む。ヴィヴィは何作ってもらったんだ?」

 隣に座った匠海から、ふわりとボディーソープのいい香りがし、ヴィヴィの胸がとくりと波打つ。

「えっと、セーフ・セックス・オン・ザ・ビーチ!」

「また、エロいものを……」

「か、カクテルの名前だもんっ」

 少しくすんだオレンジ色のそれを見つめたヴィヴィの前で、苦笑した五十嵐が、匠海のフルートグラスにシャンパンを注ぐ。

 泡が弾けるそれを見つめながら、匠海が口を開く。

「五十嵐、今日はもういいよ、ありがとう。後は、ヴィヴィに注いで貰うから」

「畏まりました。ではお二人とも、お休みなさいませ」

 五十嵐はシャンパンボトルを、氷が満たされたワインクーラーに戻すと、そう言って一礼した。

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