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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

「なんで女は、何でもかんでも『可愛い』って言うんだろうな?」

「え? お兄ちゃんだって、言ってるよ?」

 特に、えっちの最中に……、とヴィヴィは心の中で続ける。

 匠海は少し不服そうな顔をすると、タオルで髪を拭き続けていたヴィヴィの両手を掴まえ、その顔を覗き込んでくる。

「……お前は本当に可愛いんだから、しょうがない」

「……っ も、もう酔ったの?」

 匠海の瞳が少し熱っぽく見えて、ヴィヴィはそわそわする。

「たった一杯で酔うか。照れ屋だな、ヴィクトリアは」

 そう言ってにやと笑った匠海は、ヴィヴィの両手首を掴んだまま、顔中に小さなキスを落としてくる。

「ん……っ ど、ドライヤーで乾かす?」

 擽ったそうに身を捩ったヴィヴィから、匠海は手を放し、無造作に黒髪を掻き上げた。

「いや、もういい。ほら……」

 匠海はそう言うと、ピンに刺したスタッフドオリーブを、ヴィヴィの唇の前に差し出した。

 ヴィヴィがおずおずと唇を開くと、食べさせてくれる。

「おいしい……」

「俺も」

 そう催促してきた匠海に、ヴィヴィは苦笑すると、その指からピンを受け取った。

 そしてオリーブを刺すと、自分の薄い唇で咥え、兄の唇へと運ぶ。

 ちゅっという音を立てて離れたヴィヴィに、匠海が笑う。

「いい子だ」

 ヴィヴィは恥ずかしそうに微笑むと、匠海のグラスにシャンパンを注ぎ足した。

「次の試合は、四大陸だったか?」

 匠海は速いペースでシャンパンを空けていくので、ヴィヴィは合わせて注ぐ。

「うん。2月頭に、台北なの」

「そうか。さすがに現地に応援には行けないけれど、テレビで見てる。頑張れよ?」

 そう言って頭を撫でてくれる匠海に、ヴィヴィは微笑む。

「大丈夫。ヴィヴィ、これあるし」

 もふもふパーカーの首から摘み出した金色のネックレスに、匠海の頬が緩む。

「ああ。ちゃんと着けてるな」

「うん、もちろん」

(首輪がわり、だもん……)

「ヴィクトリア、おいで」

 ソファーに深く腰掛けた匠海は、バスローブの前を寛げ、ヴィヴィに手を差し出してくる。 

 ヴィヴィの心が途端に浮き立つ。

 そこは小さい頃から自分の大好きな場所。

 けれど――、

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