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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

「え……えっちな事、しない……?」

 ヴィヴィは恐る恐る、匠海にそう確認する。

「ああ」

「絶対……? ここ、リビングだよ……?」

 いくら鍵を掛けたとはいえ、万が一こんな所でことに及ばれたら、たまったものじゃない。

「大丈夫。しないから、おいで」

 そう言ってふっと笑った匠海の表情が自然なもので、ヴィヴィはソファーから立ち上がると、兄の股の間に腰を下ろす。

 そして匠海の手で横抱きにされたヴィヴィは、膝を立てた兄のそこに背を預けた。

「うふふ……幸せ」

 匠海のバスローブの胸にこてと頭を預けたヴィヴィは、心底幸せそうな声を出す。

「ヴィクトリアは、本当にこうされるの、好きだな?」

「うん。ヴィヴィ、甘えん坊だから」

「自分で言ってる」

 匠海はそう呆れたように言いながらも、ヴィヴィの肩を抱き寄せ、小さなキスを幾つかくれた。

 自分の腕の中から見上げてくるヴィヴィに、最後ちゅっと強く吸い付くと、匠海は満足そうに肩の拘束を緩めた。

「ふふ。お兄ちゃん、あ~ん」

 ヴィヴィは少し厚めにスライスされたプロシュート(生ハム)を摘まむと、指先で裂いて匠海の口元へと持っていく。

 大きめの口でぺろりと食べる匠海が面白くて、ヴィヴィは何度もそれを繰り返す。

 それをあてに残りのシャンパンを飲んでいた匠海は、ヴィヴィが最後のプロシュートを差し出してきたのを見て、その細い指先ごと、口に含んだ。

「ん……っ 指まで食べちゃ、やっ」

 口の中のものを飲み込んだ匠海は、ヴィヴィの指だけをぺろぺろと舐め始めた。

「ふふっ くすぐったい!」

 神経の集まっている指先を舌で舐められるのが、本当にくすぐったくて、可愛らしい声で笑うヴィヴィに、匠海が笑みを深める。

「プロシュートの味がした」

 最後にちゅっと指を吸い上げた匠海は、ヴィヴィの指を離すと、残っていたシャンパンを全て飲み干した。

「本当に、お酒強いよね、お兄ちゃん」

「ん? いや、酔ってるぞ?」

「本当? 全然いつもと変わらないよ?」

 顔色一つ変えない匠海を、ヴィヴィはしげしげとその股の間から見上げる。

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