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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

「表面上はな? 腹も満たされたし、頭の中はもう、お前を抱くことしか考えてない」

 そう答えた匠海は、ことりと小さな音を立ててグラスをテーブルに置き、ヴィヴィを見下ろしてきた。

「え……、だ、駄目だよ?」

「なんで?」

 そうヴィヴィに尋ねながらも、匠海の両手は妹の躰の上を這い回り始めた。

「リビングは駄目っ、てっ!? ひゃうっ あ……、ぁんっ!」

 広いリビングに、ヴィヴィの高い喘ぎが響く。

「ああ、可愛い声だね、ヴィクトリア……。もっと、聴かせてくれ……もっと――」







 結局、リビングで指でイかされてしまったヴィヴィは、匠海の寝室でプンスカしていた。

「悪かった。お前が本当に可愛い過ぎて、我慢、出来なかった……」

 そう心底すまなさそうに謝ってきた匠海に、ヴィヴィはその腕の中で頬を膨らませながら念を押す。

「……もう、本当に、絶対に、寝室以外は、駄目だよ?」

「分かってる。悪い。機嫌直して、可愛い顔見せて?」

 再度謝った匠海は、ヴィヴィの顎の下に指を添えて上を向かせる。

「うん……。ね……、お兄ちゃん」

「ん?」

 ヴィヴィは恥ずかしそうに頬を赤らめると、小さな声で囁いた。

「早く、えっち……しよう?」

「ヴィクトリア?」

 妹からのそんな催促に、匠海は少し驚いたように見下ろしてくる。

「お兄ちゃんの中の『喜び』を、ヴィヴィに、少しでいいから、分けて……?」

 そう口にしたヴィヴィの心中は複雑だったが、そう言わずにはいられなかった。

(ヴィヴィではその『喜び』、与えられないみたいだけれど、

 お兄ちゃんの中のそれ、分けて貰えたら……もう、それで――)

 しかし、匠海の反応は意外なものだった。

「ふ……、分ける? それで足りるのか?」

「え……?」

 意味が分からなくて見詰め直したヴィヴィの頬が、匠海の大きな掌で左右から包まれる。

「俺の『喜び』は、ヴィクトリアと共にあるよ。他の誰でもない、お前にある――」

「………………」

 ヴィヴィは当惑した表情を浮かべ、匠海を見上げる。

 兄の彫りの深い瞳の奥は澄んでいて、決して嘘を言っているようには見えない。

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