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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

 しかし、ヴィヴィの心の扉は開かれているのにも関わらず、何故かすとんと兄の言葉が入ってこない。

 そこにはいつの間にか、見えない透明な障壁がそびえ立っている。

 入ってこないから、解からない。

 解らないから、心に響かない。

「そこで固まるな。なんだ、今まで何度も与えたつもりだったが、足りなかったか?」

 匠海が次いで発した言葉に、ヴィヴィはさらに困惑する。

「お兄、ちゃん……?」

「じゃあ、今日、いっぱい証明して見せないとな? 俺がヴィクトリアを抱く度、どれだけ『喜び』を感じているのか」

 ヴィヴィは戸惑ったまま兄を見上げるが、徐々に匠海の端正な顔が近づいてきて、そして何も見えなくなる。

 唇に触れる張りのあるそれ。

 表層を舐められ、いつの間にか解されたその境目から、自分を掻き乱し、蕩けさせ、何も考えられなくしてしまうものが入り込んでくる。

「………………」

 今、確かに、兄は自分を抱く度に『喜び』を感じていると、言葉にしてくれた。

(……そんな……、信じて、いいのかな……?

 それは、嘘じゃない?

 それは、次に与えられる『鞭』に備えてのものじゃない……?

 ヴィヴィ……わかん、ない、よ……)

 匠海はヴィヴィの口内を柔らかく蹂躙しながら、もふもふに包まれた胸に大きな掌を触れさせてくる。

 その素材が気持ちいいのか、その上から何度も大きく揉み解される。

(気持ち、いい……。さっき、お兄ちゃんの長い指でイっちゃったから、

 そこ、また欲しくなっちゃう……)

 自分の躰は簡単に解れて行くのに反し、解れない心は置いてけぼりを食らっている。

 なのに、躰が火照るにつれ、そんなことなど、どうでもよくなってくる。

 唇が離された瞬間、自分は兄を求めて啼いてしまう。

 可愛らしい声だと褒められると、余計に甘い声が出てしまう。

 パーカーの前が開けられ、何も着けていないそこにいきなり舌を這わされると、途端にぴくぴくと華奢な肢体が震えた。

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