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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章
冬休み明けのBSTで双子を待っていたのは『Congratulations on All-Japan Figure Skating Championships !! Mr. & Ms. Shinomiya』という横断幕だった。
「すっかり有名人になっちゃったね、2人とも……」
横断幕の前で立ち尽くした双子の背後から、カレンが声をかけてきた。
「カレン~っ! Happy New Year !!」
冬休み中会えていなかったカレンに、ヴィヴィがガバチョと抱きつくと、それを受け止めたカレンは、隣のクリスに「Happy New Year クリス」と笑いかけた。
それに不満を感じたヴィヴィが、カレンから上半身を離して恨めしそうに見上げる。
「カレン、ヴィヴィの新年の挨拶、無視した~」
不服そうに唇を尖らせるヴィヴィに、カレンはぷっと吹き出す。
クスクスと笑いが止まらない様子のカレンだったが、
「良かった……。2人がテレビとか雑誌とか出て、どんどん遠い人になっちゃったみたいで、淋しかった――」
とホッとしたような表情で呟く。
そこへ通りがかったクラスメート達が加わる。
「カレン、この双子はそんな簡単にマスコミに染まらないでしょ~。特にヴィヴィなんて、どっからどう見ても前の『お子ちゃまヴィヴィ』のままじゃないか」
ヴィヴィをけしかける様にそう囃し立てる男子に、ヴィヴィは「なんだと~っ!」と小さな拳を振り上げてタータンチェックのワンピースの裾が翻(ひるがえ)るのも気にせず追いかける。
そんな様子を目を細めて見守るカレンや女子に、クリスは「変わらないよ、何も……」と小さく呟いた。
「そうだね……。お~い、ヴィヴィ、男子も。あと2分で本鈴鳴るよ!」
カレンがいつも通りの明るい笑顔でそう呼びかけると、ヴィヴィと男子の「OK~」という能天気な返事が返ってきた。
2月頭に世界ジュニアを控えた、1週間前の日曜日。
ヴィヴィは朝の練習を終えて屋敷へ戻ると、ピアノを触りたくなって着替えて防音室へと向かった。
ヴァイオリンもピアノも毎日30分でもいいから弾くようにしているが、やはり試合直前となると、何よりもスケート優先となるため、その時間を取ることさえ難しくなる。
(弾き収め~。世界ジュニア終わったら、いっぱい弾こう)