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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第72章             

「ヴィクトリアっ 痛かったか? 苦しかったのか? ごめん、本当に、ごめんっ」

 平謝りで謝ってくる匠海に、ヴィヴィは「ちがう~っ」と首を振る。

「ふぇっ 怖、かった……、お、兄ちゃん、やめて、くれ、なくてっ」

「ごめんな、痛かったよな……」

「………………」

 躰の震えが収まらない妹をあやす様に、その大きな掌で全身を撫で擦ってくれる匠海のその言葉に、ヴィヴィは詰まる。

「ヴィクトリア? まだ苦しいのか?」

「……う……。き、気持ち、よかった……」

 真っ直ぐに自分の瞳を覗き込んでくる匠海から、ヴィヴィは視線を逸らしてぼそりと呟く。

「え……?」

「き、気持ち良すぎて……、怖かった、だけ……」

「……は……?」

 匠海はヴィヴィの返答に、やや間抜けな相槌を返してくる。

「だ、だって、頭おかしくなりそうな程、き、気持ち良かったんだもんっ」

 ヴィヴィはまるで駄々っ子の様にそう言い切ると、ふんと顔を背けた。

「は……、はは……っ、もう、困った子だ……」

 脱力した匠海が、ぐったりとヴィヴィに凭れ掛かってくる。

「ご……、ごめんな、さい……?」

 なんか申し訳なくなくなってきて、ヴィヴィは小刻みに震え続ける腕を伸ばし、兄の頭をよしよしと撫でた。

「いや、たまらなく可愛いよ。そうだよな……、ヴィクトリアはまだ、20日も抱かれてないんだもんな? まだ知らない事の方が多いだろうし、そりゃ、たまには混乱するよな……」

「……す、すみません……」

 やはり自分は『お子ちゃま』なんだなと、ヴィヴィは心の中で思いながら、もう一度謝った。

「ふ、もういいって。気持ち、良かったんだろう?」

 そう言って笑ってくれた匠海に、ヴィヴィはすんと鼻を鳴らせて頷く。

「うん、死ぬかと思った……。お兄ちゃん、は?」

「物凄く、気持ち良かったよ。ありがとな」

 満面の笑顔でそう言った匠海に、ヴィヴィは大きな瞳を見開いた。

「……――っ そ、そんな……お礼だなんて……」

「ん……? ああ、なんか、言いたくなったんだ」

 そう答えて愛おしそうに覗き込まれて、ヴィヴィの心の中は疑問でいっぱいになった。

(え……、ど、どうして……? どういう、意味……?)

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