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エブリデイ
第4章 欲しいの……
「楽しそうに、何を話しているのかしら?」
即座にドアを開き顔を覗かせた私に対する、彼らの反応は一様なものだ。
「あっ――室長!」
「す、すいません。ちょっと、打ち合わせが……」
「すぐに、戻りますから」
顔に緊張を滲ませながらも、若い彼らは臆面のなくそんな風に取り繕っている。
立ち聞きした話に、文句を言うほど自分を見失いたくはなかった。それでも彼らの態度に対して、私は苛立ちを募らせてしまう。
「佐藤君――夕方の企画会議の資料、まだ貰ってないわよ」
「ハ、ハイ。この後、すぐに……」
「山根君と篠原君は、午後からクライアント回りじゃなかった?」
「今、その分担を決めていて……もう、出かけるところでした」
「だったら、急いだらどうなの。少なくとも、此処で談笑してる場合ではないはずね」
「……」
項垂れて黙ってしまった三人。そんな姿を眺めて、私も決していい気はしない。
何故、この程度でピリピリしてしまうのか。その理由というのなら、それは何となく自覚していた。