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エブリデイ
第4章 欲しいの……
※ ※
同じ日の、夜。午後十時過ぎ。
「おかえり」
自宅のマンションに帰り着いた私を、いつものその笑顔が迎えた。
「ごめんね。遅くなって」
「構わないよ。それより、ご飯どうする? 本日は私めが、じっくり煮込んだ特製のシチューがございますが」
そう言って傅いたポーズでおどける彼に対し、疲れた私の返事は実に素っ気ないものになる。
「今日は社長と一緒に、外で済ませてきたから……」
それなのに、その柔和な笑顔が変わることはなかった。
「そっか。じゃあ、ゆっくりお風呂にでも入るといいよ」
私の夫である彼は、四つ年下の二十八歳でイラストレーターを生業としている。とはいえまだ駆け出しの彼の稼ぎは、月毎に大きな波がありとても不安定だった。平均したなら私の収入の方が、かなり多い。
別にそのことに関して、私が不満を口にすることなんて皆無だった。彼の夢を理解した上で結婚に至り、私たち二人の夫婦生活も既に四年目になる。
夫婦仲は良好――そう思っていた。
最近では寧ろ、いつも帰りが遅い私の方が彼に引け目を感じているくらいである。家のことなどは概ね、彼に頼りきりになってしまって……。
そして――私が感じる引け目は、何も家事や仕事のことばかりではないのだった。