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エブリデイ
第4章 欲しいの……
そうして新幹線にて彼の田舎に向かった私たち夫婦は、その日の夕方には病院へ行くとお義父さんを見舞っている。
お義父さんの様子は、概ね電話で聞いていた通りだった。夏の終わりに引いた風邪が思いの外長引いたものの、病室で会った限りでは顔色も良く元気な姿に見えた。入院したのも念のためということであり。
「俺は平気なんだけども。母さんが心配するから、一応はな」
本人は入院したことをお義母さんのせいにすると、笑ってそう話していた。その様子を見た私と夫は、顔を見合わせるとホッと胸を撫で下ろしている。
この日には調度、夫の兄夫婦も見舞いに訪れていた。一緒に連れられて来ていた五歳と三歳の孫の登場に、一気に賑わう病室。
「じーちゃん、はやく元気になってね」
「げんきに、なって!」
まるで言わされてるみたいに口をそろえた幼い兄弟に、当の「じゃーちゃん」の顔は満面の笑みをもって総崩れとなる。
「おおっ、二人ともありがとうよ。じきに元気になるから、そしたらまた遊ぼうなぁ」
「……」
孫と触れ合うその光景を前に、何となく所在を失っていた私は――
「ちょっと、飲み物でも買ってきます」
独り言のようにそう告げて、そそくさと病室を出ていた。