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エブリデイ
第4章 欲しいの……
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私が大学を卒業した十年前は、折からの不況も影響し就職難の御時世。特に左程将来のことも考えず何となく文学部に進んだ私の様な学生にとって、その風当たりは殊の外、厳しかったように感じられた。
そんな折、私に声をかけてくれたのが、今の会社の社長である。大学時代お世話になった二年上の先輩は、自ら会社を起業してまだ間のない頃だった。
就職が決まらずに困り果てた私にとって、いただいた話は正に渡りに船である。頼りがいがあり親しく感じていた先輩の下で働けることを、私は素直に喜んでいた。
もちろん、何かを始めようとすれば、そこに苦労は伴い。企業したての会社の船出が、順風満帆である筈もなかった。限られたスタッフたちは個々に、自分の役割や昼夜すら超えて奔走する日々が続く。私も無我夢中で、懸命に働いていたものだった。
そんな十年を経た現在。幾多の実績をコツコツと積み上げた会社は、当初からすれば大きな成長を遂げているといっても過言ではあるまい。社員の数もかなり増え、管理職となった私には気がつけば何人かの部下を配されていた。