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エブリデイ
第4章 欲しいの……
と、そんな風に語ってはみたが。イベント業務を取り扱う弊社が、従業員30名にも満たない零細企業であることを、私は常に思い知っている。殊に福利厚生の面に於いて、大企業と同等である訳もないのだ。
夫との間に微妙な空気を醸し出した、その夜が明けていた次の日。
担当の業務の件で訪れた私の顔を見るなり、社長はこんな風に言うのだった。
「なにか、言いたそうな顔ね。部下たちの愚痴だったら、昨日聞いたはずだけど?」
「いいえ、そんなこと……。それに私、愚痴なんて言った覚えはありませんから」
「フフフ、まあ――そういうことに、しておいてあげるわ。仕事のことで不安があるのなら、これからも遠慮なく言って頂戴ね。貴方のことは、いつだって頼りにしてるんだから」
「はい……ありがとうございます」
仕事のこと……か。
大学時代より周知の仲である社長とは、その立場に気がねすることなく何でも話してきたつもり。でも彼女の、猪突猛進なまでに仕事に打ち込む姿を、私はその傍らでずっと見てきた。
そして、現在の私には相応の地位が与えられ。その点に於いて、彼女に感謝する私であるのだから……。
私は口にすることもなく、モヤモヤとした想いをそっと胸の内に仕舞った。