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エブリデイ
第4章 欲しいの……
※ ※
私が最後にお義父さんを見たのは、急いで駆けつけていた病室。そこに入る前には、既にお義母さんから、その容態を聞かされていた。
「なんだ……皆、来てくれたのか……幾度も、悪かったなぁ」
以前と同じ病室には、しかし――以前と違う、やつれた顔が私たちを迎えている。
私と夫、兄夫婦と二人の子供たち。どの顔にも静かにそして確実に、悲壮な想いが伝達するかの如く。まだ幼い二人の孫たちも同じく、彼らなりに何かを感じ取っていたのだろう。
だのに――乱れ行く呼吸に耐えながら、お義父さんは言ったのだ。
「俺のことはいいから……皆で何か……美味しいものでも、食べてくるといい……」
その、刹那――
――あ!?
皆を見渡したお義父さんは、やはり微笑みを向けた。弱々しくも優しく、にこりとして実に心地の良い穏やかな笑顔だった。
「……」
それを見た私は、たぶん何かに、気がつこうとしている。でも、私がそれを明確な想いとして噛み砕く為には、もう一つの場面を待たなければならなかった。
そうして――その日の遅く。お義父さんは、眠るようにして息を引き取っている。