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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
それに対して――
「え……?」
僕は間抜けにも、その真意を訊き返すだけ。
「謝らなくたって、いいわ。その代わりに、どう感じたのか――それを、教えて」
知らない人が聞けば、怒っているかのような口調で、木織は言った。
「どうって……」
「気持ち――よかったの?」
「それは……」
僕は困惑しながら、彼女の掌を見る。
「こんなに沢山なのだもの――聞くまでも、ないわね?」
まるで証拠を突きつけられた被告人であるが如く。コクリと、僕は顔をカアッと熱くさせながら、頷くより他はなかった。
すると――
「じゃあ、いいのでしょ――私たちの場合は、それで」
木織はまるで表情を変えずに、その様に言うのだ。
「……」
木織が部屋を出て行ってから、暫く。僕は脱力したままに、未だベッドから起き上がれはしない。だけど、いつまでもそうしてはいられなかった。
深夜に鎮まったこの部屋は、僕の部屋ではなく。僕の家の向かいに建つ家の二階の一室は、すなわち子供の頃によく遊んだ、木織の部屋――。
下の階には、たぶん、叔父さんも叔母さんも眠っている。僕が来てることも――ましてや僕たちが、こんなことをしてるだなんて知らないのだった。
汚れた手や口を洗いに行った木織が戻る時には、僕も早く居なくならなけれなならない……。