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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
※ ※
もう十五年以上も前になる。
区画整理を受け、郊外に新たに宅地として分譲された地区。現在も住む僕の家がまだ新築で真新しかった頃に、それより一年遅れで向いに建てられた家へ引っ越して来た家族がある。
僕はあの日のことを、今も鮮明に覚えていた。
「ほぉら、木織。隠れてないで、ご挨拶なさいよ」
「……」
叔母さんの後にへばりつくように、その顔を半分だけ覗かせて。まだ幼かった彼女は、訝しげな視線を向けていたのだと思う。
何故だろうか? 今、思い出してみても、それは不思議だ。
恐らく彼女以上に怖がりで人見知りだった筈の僕。なのにその時は、気がつけば自分から彼女の元に歩み寄っていた。
「……?」
目の前で初めて顔を合わせた彼女は、その当時はまだ僕より少し背が高く。少しもじもじと身体を捩りながら、それでもじっと僕のことを見つめていた。